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白銀の虎 side司にしおりをはさみました!
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白銀の虎 side司
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グルルルルと唸りながら、ネコ科独特の瞳が近づいてくる。
自分で青史を守ると啖呵を切ったものの、やっぱり怖いものは怖くて、無意識のうちに後ずさりをする。
すると、運の悪いことに青史の足にひっかかってバランスを崩してしまった。
その瞬間、虎が動くのを目のはしっこにとらえた。
殺されるッ!!!
そんな本能に近いものがゆらぐ景色のなか胸が貫くのを感じた。
そして次の瞬間、ふいに虎の輪郭が揺らいだ気がした。
気がつくと、自分は尻もちをついていた。
でも、なぜか、痛みはまったく感じられなかった。
いやふくらはぎの引っ掻かれた部分はたしかにジクジクと痛むがそれだけだ。
何が起こったのか分からなかった。
虎はさっきと同じゆっくりとした足どりでこちらに来ると、またゆっくりと俺の血を舐めとった。
「ヒャッ!」
ざらざらとした感触が伝わる。
少しすると、虎の体温も感じられた。
ふくらはぎの傷はそんなに深いものではないけど、虎の爪は想像以上に鋭かった。
思わず金色の目を見つめた。
虎は俺の血を舐めるのに集中しているらしく、テラテラとひかる牙に傷口があたることはなかった。
白銀の虎…正確にイメージすることはできないけど、白虎みたい。
強くて、綺麗で、たくましい。
全身から生命力がみなぎっているようだ。
すると、急に虎がちがう方を向いた。
そのとたん、虎が吹っ飛んだ。
「ギャオンッ!」
藤本…!?
藤本がハーッハーッと息を切らして、俺の目の前に立っている。
数秒後に藤本が虎にドロップキックをかましたのだと分かった。
「おまえ、何して…!」
藤本を見上げるが、藤本は自分で攻撃したにもかかわらず攻撃した自分に驚いたように目を見開いていた。
「イッタぁ…」
「ええ!?」
凛太朗の驚く声がして、そちらを見るが、そこにはブルっと身体をふるう虎がいるだけだ。
「ど…どうしたの」
「い、今…この虎…しゃべった…」
「グルルルル…」
虎がプイとそっぽを向き、藤本に何度か吠えた。
本来なら止めなきゃいけないところだけど、俺のなかで一つの可能性が生まれた。
虎はまた藤本に襲いかかろうとしている。
俺はその可能性に賭けてみる価値があるような気がした。
ほとんどカンだけど…。
やらないよりは、マシ!!
「ねぇ!!」
俺は誰ともなく呼びかけた。
振り向いたのは、凛太朗と藤本と…虎。
さっきから、この虎は俺ら人間の声に反応している気がしたのだ。
しゃべるのは本当かどうか分からないけど、言葉が通じるかもしれない。
後から考えたらバカな考えだが、そのときは本当にそうだと思ったのだ。
ほとんど確信に近かった。
俺は座り込んだまま、少しだけ虎に近づいた。
そして、両手を後ろに回し、ケガした足を前に置いた。
「おいで…」
虎はしばらく動かなかった。
そして一歩、また二歩と近づいてくる。
俺が少しでも身じろぎすれば、いつでも襲いかかろうとしているのがビンビン伝わってくる。
俺はふるえる身体を必死で抑えながら、虎から目を離さなかった。
そして、ついにあと一歩というところで、一声上げた。
ビクッとからだが跳ねる。
ビクビクしながらもう一度見つめた瞳には、もう、殺意は感じられなかった。
「おいで…」
ゆっくりと腕を広げる。
そしてついに、俺の顔の2倍以上もある大きな顔が胸に収まった。
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