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”ウラノ”にしおりをはさみました!
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”ウラノ”
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「ったくおまえはァ!」
「ハハハ、ごめん、ごめんてば!
そんな照れなくてもイタタタ」
ウラノは難なく右腕でマクラを防御しながらも、俺をからかうことは忘れない。
…こんなヤツだが、昔は今とは思いもしないぐらい弱くて脆くて泣き虫なヤツだった。
何かと言えばすぐに泣きそうな顔をして、俺にしがみついてくるような、ヘタレな男だった。
クラスのみんなによく『モヤシ』とか『男女』とか呼ばれて泣かされてる典型的な男。
俺はコイツと幼馴染だという理由だけで遠巻きにされたのをよく覚えている。
だけど…よくもまあ、この数年で化けたものだ。
今では親父の会社の研究グループのリーダー格を勤め上げている、立派なアタマのイイ研究者。
加えてビッチ。しかもすぐ泣くのは変わらないからタチ悪い。
「…なんか悪口言ってない?」
「何の話だよ」
「いや、べつにメタいからいいけどさ」
「…ふうん」
俺はマクラを元の場所に戻し、乱れた衣服をそのままに風呂場に直行する。
途中で入ってこようとしたウラノを叩き出し、俺は薄めのタートルネックのセーターとパンツだけ着、
リビングでブーたれていたウラノを起こすと、俺は簡単なオカズとごはんを2人分よそった。
「ほれ、野菜炒め」
「………」
「好き嫌いすんなよ」
「わかってま〜す。でもごはん、こんなにいらない」
「バカ! またマトモな食生活してないんだろ。
いいから食え!」
「ブゥ」
「食・え!」
差し出された茶碗を突き返すと、ウラノはあきらめたようにチェ…と言いながらも席に戻っていった。
「いただきます」
「まーす」
「…………」
「…………」
時刻は11時。
俺は今日夕食をとるヒマがなかった。
どうもこんな時間までくると腹の虫すらマヒしてお腹空いているのかどうかもわからなかったが、
いつもどおりペロリとそれらを平らげた。
「…あんま食べると胃もたれしない?」
「しねぇよ」
ポツリとこぼした一言をバサッと切る。
ウラノの茶碗にはまだ半分以上の米が残っていて、だけど野菜炒めだけは言いつけどおりキャベツのカケラひとつなかった。
「おまえ、素直なのか頑固なのかどっちかにしろよ…」
「なんでぇ? 僕は素直なイイ子だよ?
…ねぇ、だからさぁー」
「ダメっつってんだろ。ほら、これやるから」
そばにあったビニール袋をガサガサと漁り、ヒョイとプリンをウラノの目の前に置いた。
たちまちウラノは目を輝かせてプリンを手にとってフタを開け、ウットリと顔を緩ませた。
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