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大浴場にしおりをはさみました!
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大浴場
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実は、用事なんて、なかった。
ミケ先輩を追い出すために、とっさについた嘘。だけど、もし用事があったとしても、行けないだろうな……
そんなことを言っても、このまま部屋にいたら、余計考え事をしてしまう。
外へ出ようと思うが、どこかに行きたいわけでもない。
『なあ、志真。知ってたか?ここの寮はな……』
昨日の衛の言葉が蘇る。
昨日、衛が話してくれた内容の中で、俺が驚く新事実が沢山あった。
いかに、自分がこの学園のことを何も知らずに来たかが露呈する。
本当に、この学園に来たのは、寮があるっていうことだけで来た。それなのに、その寮についてもあまりに無情報過ぎたと思っている。
でも、知らなかったんだ、この俺の寮が、まさかA組と限られた人専用の寮だったなんて。
つまり、この広い部屋っていうのは、A組特権らしい。そして、生徒会役員、風紀委員の役員も、この第一寮に住める。
でも、気がつくべきだった。第一寮というくらいだから、第二とかあるだろうってことを。
衛の話によると、
第一寮は、俺たちA組の人と重役たちが住める寮。
第二寮は、B〜C組の人たちの寮。ちなみに、俺らは1人部屋だけど、第二寮からは、基本は2人部屋らしい。
そして、第三寮は、D〜E組の人たちの寮。E組の人たちは、素行が悪い人が多いらしく、ここには近付かない方がいいと言われた。言われなくても行きたくない。
この学園さ、敷地広いし、色々経営状態とか大丈夫なのかな。心配になってきた。まあ、金持ちがいっぱい通ってるから、大丈夫か。
この第一寮。何だか、待遇が他の寮よりいい。
食堂もオシャレだし、大浴場もジムもついてるし、共有スペースも綺麗。
俺はあまり外に出ないからわからないが、衛曰く、ここの大浴場は広くて開放的らしいので、行ってみたいとおもった。
ん?大浴場か……
今の時間帯なら(現在、12時45分)、きっと人はいないのではないだろうか。ちょっと、昼間に入るのもいいかもしれない。
何より、今何だかスッキリしたい。
何でも、この大浴場はこの第一寮の最上階にあるんだとか。
各部屋に個別のお風呂はついているけど、大浴場っていうのは広々としているだろう。
俺は、そうと決まると、お風呂に入る準備をした。
とりあえず、何かをしてないとダメになりそうだった。
エレベーターに乗ると、最上階である13階のボタンを押した。
普段、あまり意識しないけど、この寮13階建てなんだ。13階ってなんかあんまり良いイメージないけど……
最上階に行くまでに、驚くことに誰にも会わなかった。
みんな、どこかに出かけてるか、部屋に籠っているんだろうなー。なんだ、金持ちもそこらへんは変わらないんだ。
大浴場の脱衣場は、予想通り誰もいなかった。風呂場の方からも、誰かがいる気配がない。
これは、大浴場貸切か。
そう思うと、さっきまで沈んでいた心が少し晴れた気がした。
服を脱いでいる時、俺は気分が良くなって、歌を歌った。曲は、もちろん『MCRK』のデビュー曲。この曲が、一番好きだ。
6月には、新しい曲を出すという情報が入っている。
俺は、上機嫌で大浴場に入っていった。
まさか、そこにとんでもない人がいるとは知らずに……。
「えっ。」
「ん?ああ、お前か。」
そこにいたのは、優雅に風呂に浸かっている、会長さまでした。
引き締まった身体は、とても羨ましいくらいだ。俺も、筋肉がないわけじゃないけど、あまりいいつき方をしていない。
「あの……なんで会長がいるんですか。」
「いちゃ悪いかよ。俺は、毎週、この時間この風呂に入ってる。お前こそ、なんでこんなところにいる。1年がここの場所を知るには少し早いが。」
「友達に教えてもらいました。」
「そうか。まあ、いい。2、3年は、俺に気を遣って、何故かこの時間に入りに来ない。誰かいると新鮮でいい。」
あ、もしかして、会長がこの時間に入るのって、暗黙の了解だったりするのか。やばい。もし、誰かに知られたら、俺、終わる。
衛ー。どうせなら、会長がいる時間とかも、教えてくれて良かったんだけどー。
が、来てしまったものは仕方ない。会長がいいと言っているのだから、別に入っていっても、差し支えないのだろう。
俺は、身体を洗うためにシャワーがついてるところへ行った。
髪とか身体を洗い始める。そこまで時間はかけない方だ。
「おい。」
シャンプーをしてる時に、会長が話しかけてきた。ちなみに俺は、リンスインシャンプー派だ。髪に泡がついているので、仕方なく後ろを向いたままで、返事をした。
「何でしょうか?」
「お前、さっき脱衣場で歌ってたよな。」
聞かれてたか。
俺は、泡を流した。そして、身体を洗い始める。
歌を歌うのは、嫌いな方じゃないし、気分が良い時は自然と歌ってしまう方だ。だけど、カラオケとか人前で歌うとかは、少し苦手。恥ずかしいじゃないか。
「あれ、『MCRK』のデビュー曲だろ。」
「えっ。会長、知ってるんですか。」
「ああ、だってあのバンド結構有名になっただろう。最近だと、バラエティー番組にも出てる。俺は、そこまで詳しいわけではないが、その曲くらいは知ってる。」
「そうですか……。」
会長、テレビとか見るんだ。バラエティー番組も見るんだ。意外だな。
金持ちの坊っちゃんは、庶民が見て楽しむような番組は見ないものかと思っていた。見たとしても、NHKとかだと……
「お前、『MCRK』好きなのか。」
「あ、まあ、はい。好きです。」
「そうか。」
あー、どうしよう。身体、洗い終わったけど、なんか気まずくて、湯船に入るの勇気いるな。
でも、せっかく来たのだし、入らないのはなんか。
でも、こっちは全裸なわけで少し恥ずかしいというか……ん?恥ずかしい?何を、男同士で恥ずかしがる必要があるんだ。
俺は、意を決して、湯船に入るために立ち上がった。
そして、振り返るが、会長は下を向いて、何かを考えているようだった。
俺は、ここのどこかでホッとしながら、湯船に足を入れた。程よい温度でいい感じだ。
「失礼しまーす。……ふぅー。」
湯船に浸かると自然と声が出る。
ああ、気持ちいいー。
だけど、会長はやっぱり何も言わずに黙ってる。
ああ、気まずい。会話なんて、どんな会話していいかわからないし。
チラリと会長を見ると、会長と目が合った。
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