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18歳以上ですか?
運動?スポーツ?応援?にしおりをはさみました!
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運動?スポーツ?応援?
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体育祭とか、真面目に出るのは小学生以来なんじゃないだろうか。
と言っても、うちの場合は、体育祭じゃなくてスポーツ大会だけど。
私立緑ヶ丘学園高等部のスポーツ大会は、2日に渡り行われる。
種目は、サッカー、バスケ、テニス、バレーボール、バドミントン、卓球、ソフトボールの7種目だ。
生徒はどれかの種目に1つは出なくてはいけない。
サッカーは11人、バスケは5人、テニスは2人、バレーボールは6人、バドミントンは2人、卓球も2人、ソフトボールは9人だ。
単純計算で、計37人。
B組以降は、40人いるから、サッカー、バスケ、バレーボール、ソフトボールのどれかの人数を1人増やす。
そして、A組の場合は、7人はダブルエントリーをする。
___というのは、ただの原則である。
もっとルールをちゃんと決めないから、俺みたいのが出るんだ。
「えっ。志真くん、4つも競技出るの?!」
それは、スポーツ大会1日前の生徒会室での会話。
みんな各々明日の仕事の話とか(実行委員の他に生徒会と風紀委員は、当日に少しお手伝いをします)この間の奨学生条件緩和の交渉状況とか、色々話すことがあったし、会議自体はないものの、自然と生徒会室に集まっていた。
そこで、明日の出場種目の話になった時に、俺の出場種目の多さに、会長や副会長も手を止めてしまった。
「はい。と、言っても、2つはサッカーとバスケですし、俺がいなくてもどうにかなると思うので、あんまり心配はしてないんですけど。」
「志真くん。それは、心配した方がいいですね。そんなに出場したんじゃ、志真くんが疲れてしまいますよ?」
副会長が心配そうに俺を見てくる。うん。今日もいい女神っぷりだ。
「実行委員は、誰だ。そんなこと許されるわけないだろう。」
会長が怪訝そうな顔で俺を見てくる。うん。こっちは相変わらず怖いな。
「いや。あの。うちはA組なんで、7人ダブルエントリーしなくちゃいけないんですけど、うちのクラス、当日来られない人が多くて、15人ダブルエントリーしなくちゃいけなくなったんです。」
8人は、何でも親会社が同じ系列の会社の御曹子らしく、親会社が主催するパティーに出席しなくてはならないらしい。彼らは、スポーツ大会を公欠出来る。
そんなのうちの学園だから、許されることである。
「それで、どうしようかってなった時に、担任が俺と衛に4つ出て貰えば、楽になるとかわけのわからないことを言い出しまして。なんやかんやで、うちのクラス、インドアが多くて少しでも自分にくる確率を減らしたいのか、みんなして担任の意見を聞き入れたんですよ。」
あのくそ浜口さんが、またもや決めるのが面倒だとかいう理由で、俺と衛を生け贄にしたんだ。
わけわからない。
「あー。浜口さんかー。それは、気の毒だね、志真くん。でも、志真くんどうぜ運動も出来るんでしょ?いいじゃん、目立てば。」
「翼。ひがみに聞こえる。」
相変わらずの双子の会話。
というか、翼先輩の俺への攻撃的な話し方どうにかならないのかな。
でも、くそ浜口については、何だか意見が合いそうだ。この間、課題出されてたからだろうか。
「それにしても、シマたんとまもくんだけ4種目ってどーなの?」
ミケ先輩が心配そうに俺を上目遣いで見てくる。
この人、普通に話して、普通に行動してたら、可愛いんだよな。ショタってやつ。
でも、この人、顔に似合わずとんでもないことを言ったり、とんでもない行動をしたり、かと思えば、この人柔道部なんて入ってるから、わりと身のこなしが凄い。
そんなの俺は、ショタと認めない。
「あの……俺が出る種目は、サッカーとバスケとバレーボールとソフトボールなんですけど、そんなに大変ですか。というか、実は俺、4つともやったことなくて、実際どういう感じなのかわからないんです。」
今回のスポーツ大会の種目は、1個もやったことがなかった。
「えっ、なに。志真くんその4つどういうスポーツかわかんないの?」
「いや、わかってますよ。テレビとかでよく見ますから。ただ……やったことないんです。」
「「「「やったことない?」」」」
その場にいた全員に聞き返されてしまった。
「志真くん、体育の授業とかでやったことあるでしょ?」
「すみません。俺、体育の授業はほとんど出なかったので……」
体育の授業なんて、まともに出たのは、小学生の時くらいだ。しかも、小学生の時の体育なんて、本格的に試合をやったりしたわけではなかったし、そもそも俺、体を動かすこと自体好きじゃなかったし。
「でも!体力には、自信があるので、大丈夫だと思います。」
「うちのスポ大舐めない方がいいよ。なんてたってこの大会、クラス別競争の裏で、もう1つの競争がなされてるんだから。」
もう1つの競争?
椿先輩の言っていることがわからなかった。
スポーツ大会(略して、スポ大)は、各クラス対抗計15チームで優勝を争う大会ではないのだろうか。
「志真くんさ、あれでしょ?平和ボケで、大切なこと忘れてるでしょ?」
「平和ボケってなんですか!」
「平和ボケだよ。もしかして、宝探しの時のこと忘れたわけ?」
「翼!言い過ぎ。志真くんわかってないんだから、意地悪しないの。」
……宝探しの時のこと。
あれは、思い出したくもない出来事だったけど、今回の件とあのことは、何が関係してると言うのだろうか。
「もー、志真くん頭良いのか、悪いのかわかんないね。あのさ、俺たち生徒会のことだーいすきな人たちのこと忘れてない?」
生徒会のことが大好きな人たち……
「あっ!親衛隊。」
「そうそう。あとわけのわからないファンクラブね。1番過激なのは、副会長のところだけどー」
翼先輩が、そう言って副会長を見ると、副会長は申し訳なさそうな顔をした。
そういえば、宝探しの時、俺を襲ったのは、副会長のファンクラブ会員だった。
副会長は、女神だからきっとモテるのだろう。
「あのね、その親衛隊とファンクラブが、競争するんだよ。」
「あの、どうやって競争するんですか。だって競技ですし、クラス別対抗を名目にしてやってるわけですから、難しくないですか?」
「シマたん。別に、競技で競ってるわけじゃないんだよ。あの人たちがね、競ってるのは、応援合戦だよ。」
応援合戦?
なにそれ。
そもそも応援ってあの応援だよな……
どうやって競うっていうんだ。
「単純に言えば、俺たちへのポイント稼ぎだよ。」
「私たちは、特に頑張って目立っていた生徒に、毎年表彰状をあげてますから。その表彰状を巡っての対決ですね。初めは、純粋に大会を盛り上げてくれたお礼に、生徒会特別賞という形で、個人表彰してたのですが、いつの間にか、それをどちらの生徒が貰うかの、もう1つの戦いになってしまいました。」
つまりこういうことか、
スポ大頑張って盛り上げる
↓
目立って目立って、盛り上げる
↓
尚且つ他の人の応援とかもする
↓
最後は、勝っても負けても仲間と喜び合う姿をアピール
↓
最後の表彰状式で、生徒会特別賞を個人受賞
「俺たちも、一度始めてしまったら、なかなかやめられなくて、結局今年で5年目だよ。1番はじめに始めた生徒会長は、まさか5年経って、事がこんなに大きくなるとは思ってなかったんだと思う。」
そうか。
自分たちが始めたわけじゃないから、やめるにやめられないものがあるのね。
でも、それって……
「もし、親衛隊にもファンクラブにも入ってない人が受賞したらどうなるんですか?」
あれ?
俺、変なこと言っただろうか。
その場の誰もが、一瞬固まった。
そして、何か考えるような顔をする。
沈黙に、いよいよ不信感を覚えた俺が、口を開こうとした時に、目を見開いていた会長が呟いた。
「そんなことしたら、決着着かないし、もしかしたら、こんな伝統になりそうな戦い終わるかもな。」
「じゃあ、今年が最後って予め発表しとくのは、どうかな?」
「理由は、予算の関係とかにしておけば、問題はないと思います。学校側には、生徒の二分化悪化を避けるため、と説明すれば、私達なら納得してくれるでしょう。」
「でもさぁ、受賞しちゃった子、恨まれないかなー?」
「なんで?」
「だってさ、さーちゃん。その子で終わっちゃうのに、結局無所属の子に持ってかれちゃうなんて、とんでもないでしょ?」
「でもさ、そう考えたら、そんないないんじゃない?そんなに都合のいい子。」
集まる俺への視線。
「いや、俺はダメですよ?!俺、生徒会です。紛いなりにも。」
一斉にため息をつく。
いや、いくらなんでも、もうこれ以上恨みを買いたくないっていうのが、本音だ。
というか、そういうのに頼らなくてもどうにかなる方法を考えたらどうなのだろうか。
生徒会が決めたことに、親衛隊とかファンクラブなら従いそうなんだけど……
「じゃあ、あれは?あの小さい子。」
「あーあのいかにも襲われそうな子でしょ?」
「ダメです。」
俺は、戸巻兄弟の意見を止めた。
小さい子っていうのは、間違いなく安田くんのことだろう。
もし、安田くんが誰かに恨まれでもしたら、安田くんは何をされるかわからない。
それに、安田くんになら、喜んで何かをするって奴らもいる。安田くん可愛いから。
「安田くんは、ダメです。」
「じゃあ、誰ならいいの?」
「……山河。」
俺の言葉に、会長は持っていたボールペンを机に落とした。
みんな唖然として俺を見ている。
でも、この反応はまあ想像通りだ。
こうなるだろうな、とは思っていた。
補足説明をする。
「いや、あの。山河なら、親衛隊とかファンクラブとか入ってないし、恨み買っても平気だと思うんです。」
「……でもさ、シマたん。りっくんは、その……ちゃんとやらないでしょ?あれ、ちゃんと目立たないとあげられないんだよ?」
それは、ごもっともだ。
俺も普通にやってて山河がその賞を貰うに値するとは思ってない。
むしろ、当日ちゃんと参加するかも微妙だし。
でも、そこは。
「何とかしますよ。奴は言えばわかる奴です。」
「随分と仲良くなったんだな。」
会長が怖い顔で俺を見てくる。
本当に怖いからやめて欲しい。
「いえ、そんなんじゃないですけど……」
「そんなんじゃないのに、そんなに信用してるのか。」
「信用してるってわけではないですけど。」
「じゃあ、なんであいつがそんな役を引き受けてくれると思うんだ?」
「それは……」
「宮ちゃん。攻め過ぎ。シマたん困ってるし、そういうのは、2人の時にやってくれる?ここは、シマたんを信じて任せようよ。元々は、おれたちだけで何とかしなきゃいけなかった問題でしょ?」
ミケ先輩の仲裁で、その場は何とか収まったが、俺と会長の間に溝が出来たのは確実だ。
なんで、会長はあんなにも、俺と山河の関係を言うんだろうか。俺には、イマイチ理解出来ない。
山河への交渉は、俺が一任して、明日からのスポーツ大会に向け、それぞれの仕事をすることを誓い、俺たちは解散した。
俺は、スポーツ大会がどれほど大変なものかはわかってなかったけど、とりあえず山河と話すために、連絡を取って早々に生徒会室を後にした。
会長の視線が痛かった。
嫌われたかな……
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