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生徒会室にて。会長の暴露。
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らしくないことをしてると、おれ(三池正孝)を含むその場にいた全員が思ったと思う。
おれが思わず止めに入ったのは、ちょっとした違和感と、その場の空気清浄のためだ。
宮ちゃんとシマたんがあんな風に言い合いみたいになるのを見るのは、初めてだったかもしれない。それは、シマたんがやっと生徒会に馴染めてきたっていう証でもあるだろうけど、宮ちゃんもシマたんに遠慮がなくなってきたということだ。
シマたんがいなくなった生徒会室の空気は、どうも居心地の悪いものがあった。
結局、あの後、宮ちゃんの業務連絡を聞いて、シマたんは何事もなかったかのように、いつも通りの無表情で、生徒会室を出て行ってしまった。
取り残されたおれたちは、何とも言えない空気を放っている宮ちゃんに、なんて声をかけていいかわからないでいた。
宮ちゃんは、この生徒会室のボスだ。
ボスによって空気は変わるし、基本、なんやかんやいって、副会長のユキちゃんは、宮ちゃんにどこまでもついていくって感じで、きーちゃんは宮ちゃんと揉め事を起こすのは、嫌だって感じ。さらに、さーちゃんに関しては、面倒ごとが嫌いだから、今の宮ちゃんに話しかけるのは、嫌なようだ。
さて。かく言うおれは、どうかと言うと、ここは先輩の出番かな、と絶賛先輩風を吹かせたい中だ。
つまり、ここはおれが行くしかないってわけだ___。
「らしくないね、宮ちゃん。」
ここは、遠回しに言うより、直球で言った方が効き目がある。
「シマたんと何かあったの?この間から、少しおかしいけど。」
強いて言うなら、テスト終わった後くらいから。2人の間に何かあったのだろうか、と疑問に思っていたのだ。
「別に。何もないが。」
「ふーん。でもさ、宮ちゃん、シマたんに突っかかるよねー。」
他のみんなも、手は明日の書類をまとめたり、目線は明日のルール説明の紙を見ていたりしてるけど、耳はきっとおれたち2人の会話に耳を傾けている。
「なあ、ミケ。なんで、あいつは、あんなに山河陸と関わってるんだ。」
りっくんは、風紀に任せた危険人物。
おれだって、りっくんに関しては、完全な信頼は置いてない。まだ半信半疑。圧倒的な情報量の少なさで言ったら、毎年の危険人物に比べて、かなりガードが固い。
さすが、山河組と言うべきか。
「うーん。おれも、よくわかんないけどさ、危険人物同士、どこか通じ合ってるんじゃない?」
正直なところ、りっくんもわかんないけど、シマたんに関しては、全くと言っていいほど情報がない。
りっくんは、バックについてるのがどこっていうのがハッキリしてる分、まだいいけど、シマたんに関しては、何がその背景にあるか全くわからないし、その背景にあるものが、危険なのか、そうでないのか、っていうのもわからない。
「しゅうちゃんにさ、探り入れたのに、全く教えてくれなかったし。りっくんのことも、シマたんのことも。」
そもそも、りっくんとシマたんは、入学前から面識があったのかっていうのも、気になる。面識があったなら、それはそれで大変面倒なことになりそうだけど。
理事長であるしゅうちゃんに、色々と探りを入れているものの、その2人に関しては絶対に口を割らない。(しゅうちゃんも、頑固だから絶対教えてくれないし)
「京ちゃんも、りっくんに関しては、まだ様子見って感じだし。ていうかさ、りっくんのことは風紀に任せるんでしょ?」
「だけど、志真に関わってるなら、関係ないじゃ済まないだろう。京谷も相変わらずあんなんで、ちゃんと山河陸について考えてるのかもわからない。」
「ちゃんと考えてるよー。京ちゃんあれでも、毎日りっくんと会ってるっぽいし。もー、宮ちゃんはそーやって、すぐ京ちゃんのこと疑うんだからー。従兄弟なんでしょ?」
これを言うと、いつも宮ちゃんは、俺を睨んでくる。
でも、そうは言っても、事実は事実。
宮ちゃんと京ちゃんは、従兄弟同士。
宮ちゃんのお父さんと京ちゃんのお母さんが兄妹なんだとか。
まあ、この世界じゃありがちだけど、問題は何故か宮ちゃんが京ちゃんを邪険にしてること。前に何かあったのか、ただ単に何と無く京ちゃんのことが気に入らないのかわからないけど、風紀委員長と生徒会長なんて対極な位置にいるし、おれにはよくわからない。
「あいつは、従兄弟だけど、血が繋がってるとは思えない。というか、思いたくない。」
宮ちゃんって、ちょっとガキだよね。
とも言えず、笑って誤魔化すおれ。
ここの関係は少し面倒臭いくて、正直なところおれもあんまり口出しが出来ない。
でも、シマたん以外は、宮ちゃんと京ちゃんが従兄弟だって知ってるから、ここの関係はまだいい。
問題は、きっとおれしか知らない情報。
「宮ちゃんも、直接聞きに行けばいいのに。きっと宮ちゃんなら、教えてくれると思うのにな、だって____」
「ミケ。余計なこと言うなよ。」
おれがしゅうちゃんと連絡がつかなくて、でもどうしても会いたい時、大体間を取り持ってくれるのが宮ちゃんだ。
理由は簡単。しゅうちゃんと宮ちゃんが、親戚関係にあるから。ここもややこしいんだけど、宮ちゃんのおじいさんとしゅうちゃんのお父さんが兄弟なんだとか。
つまり、しゅうちゃんは、宮ちゃんと京ちゃんの大叔父にあたるのだ。
本当に、ビックリビッグ家系だと(上手いこと言ったと思ってる)思う。
これ、みんなが知らないオフレコなこと。
まあ、いつかはみんな知ることになるだろうけど。
「でもね、宮ちゃん。なんで、シマたんとりっくんの関係がそんなに気になるの?少し、異常だよ。だって、同じ学年なんだし、共通の友達もいるみたいだし、仲良くなってもおかしくないでしょー。」
ゆうちゃんとシマたん仲良いし、ゆうちゃんとりっくんも仲良いんだから、まあ友達の友達って感じで、仲良くてもいいんじゃないかとおれは思う。
「気になるんだ。志真と山河陸の関係が。」
ん?
「正直、あの風紀の小僧と志真の関係も気になる。」
それってつまり……
「好きなの?シマたんのこと。」
黙ってしまう宮ちゃん。
その時、いつの間にか他の人たちの動きが止まってることに、気づく。
ユキちゃん、さーちゃん、きーちゃんの3人と目が合った。
3人とも、バツの悪そうな顔をしている。
それもそうだ。
今まで宮ちゃんは、そういう色恋沙汰には、縁も所縁もなかったから。
「ねえねえ、宮ちゃん。どういう風に気になるの?」
黙っている宮ちゃんに恐る恐る聞くと、ポツポツと答えてきた。
「モヤモヤする。あと、少しイラつく。」
あ、はいー。
3人の方を見ると、みんなも同じことを考えているようで、同時に頷いていた。
「宮ちゃん。それ、シマたんのこと好きなんだよ。」
「好き?」
「そう。宮ちゃんにいつも、好きです、って言ってくる子たちと同じ。宮ちゃんもシマたんをそういう意味で好きなんだよ。」
どうもピンと来てない宮ちゃん。
宮ちゃん今まで、好かれることはあっても、好きになることはなかったんだろうなー。経験はあっても、そこに感情はない的な。それでも、宮ちゃんが好きな子が多くて、感情なくても宮ちゃんに抱かれたいって、宮ちゃんに抱かれた子も多いだろうし。
というか、宮ちゃんも押しに弱いから、グイグイ来られたら、断れずにそのまま流しちゃうからいけないんだけど。
あー、焦れったい。
宮ちゃんは基本俺様なくせに、疎いものには本当に疎くて(とくに自分自身のこと)、自信も実力もあるくせに、事に感情の問題になるとすぐ自分の気持ち放り出すから、めんどくさいんだ。
まあ、でも、もしここで、シマたんへの気持ちを自覚させたら、どうなるんだろうってちょっと怖いけどね。修羅場だけはやだ。
「シマたん抱きたい?」
極端な質問をしてみる。
3人はもはや息を飲んでおれたちの会話を聞いているようだ。
宮ちゃんは、何だか雷に打たれたような表情をしてるし。
「ミケ。わかった。」
「何が?」
「俺、志真が好きだ。多分、かなり。」
あーあ。怖い怖い。
こういうの、何の恥かしげもなく言えちゃう宮ちゃんがおれは怖いよ。
でも、自覚したあとの宮ちゃんは、その前とあまり変わりなかった。
そこは、さすが宮ちゃんというか、なんというか。
シマたんのことが好きなのは自覚したみたいだけど、シマたんがそういうのに免疫がないのと、他のことに今はお互いに忙しいと考えているのと、色々と重なって、今は何も行動を起こす気はないらしい。
でも、おれはそれは大正解な行動だと思っている。
おれの予想では、宮ちゃんが自覚する前から、シマたんは宮ちゃんのことが好きだった。これは完璧に予想でしかないが、シマたんはその自分の気持ちに、かなりストップをかけている。
それが何故なのか、どうしてストップをかける必要があるのか、今はシマたん以外誰も知らないことだ。
だけど、宮ちゃんはきっとそんなシマたんをほっとくことは出来ないだろうから。
今後の2人の動向に目を向けてあげなくてはいけない。おれは、2人はとてもお似合いだと思う。今更おれの入る隙なんて無いくらいには、好き合ってると思うんだけど、それが叶うのはもう少しあと話だ。
何かあったら、またフォローを入れてあげなくてはならない。
それに、シマたんのことが好きなのは、宮ちゃんだけじゃないだろうし。
そこも、わりとネックだ。
本当に世話が焼けるんだからー。
おれは、暴露して何と無くスッキリしてる宮ちゃんとは対照的にこれから起こる苦労に、ため息をついた。
明日からスポーツ大会だけど、頭使い過ぎて、身体が動く気がしない。
困ったものだ。
その日の夜。
おれは、ユキちゃん、さーちゃん、きーちゃんに、
『今日のことは、内密に。そして、これからの2人については、暖かく見守るのが1番だとおもう。』
というメールをした。
3人とも、
『同感。』
という返信が来た。
何かと気を使う日が増えそうだ。
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