アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
8にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
8
-
「…会いたい。」
気付いた時にはそう言っていた。
「俺も!俺も、会いたい。」
彼は本当は僕と会って話をしようとしたけれど行けなくて電話をしたのだと言った。僕の家のすぐ側のコンビニまで来ているらしい。急いで用意をし家を飛び出した。彼が待っているコンビニに着くと、彼は外で落ち着かない様子で辺りを見渡していた。そして僕に気付くと少し緊張した笑顔で僕に走り寄って来た。
「早かったな。走って来たのか?」
そう言って僕と向かい合った時、彼は少し下の方をじっと見たまま顔を強張らせた。
「…その手。」
「え?」
「その手はどうした!?」
彼に言われてはっとした。
「…これ、は。」
どう説明すればいいのか、僕が黙ってしまうと、彼は待っていろ言うとコンビニの中に入り何かを買って戻って来た。
「今日は車で来たんだ。早く乗って。」
彼が車を持っている事は知っていたけれど、乗るのは初めてだ。少し緊張しながら彼に促され助手席に乗り込む。
「手を出して。」
恐る恐る手を出すと、彼は壊れ物を扱うかの様に優しく僕の手に触れた。そして袋から消毒液とガーゼを取り出し、僕の手の傷をそっと押さえた。
「大丈夫か?」
「うん、ありがとう。」
傷に絆創膏を貼り、包帯を巻いててくれた。彼はもうこの傷の理由を聞いたりはしなかった。
「お前が良いなら、一緒に行きたい所があるんだ。」
「どこへ行くの?」
「水族館。好きだろう?」
確かに僕は水族館が好きで、一人で行く事もあるくらいだ。でもそれを彼に言った事があっただろうか、首を傾げると彼は車のエンジンをかけた。
「いいか?」
僕が頷くと、彼はほっとした様に微笑んだ。
隣の県にある大きな水族館に行こうと彼は言った。その水族館は僕が行きたくて仕方がなかった所だった。
「前に、その水族館の特集をテレビで一緒に観たの憶えているか?その時のお前は子どもみたいに目を輝かせていた。そんな顔見た事なくてすごく驚いたけれど、そんな顔をもっと見てみたかった。だからそこに一緒に行けばお前のそんな顔もっと見れるんじゃないかって思ったんだ。」
彼は僕の事を見てくれていた。それがとても嬉しい。
「なあ、…話を、してもいいか?」
僕は黙って頷いた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
8 / 10