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その日何とか残業を終わらせ家に帰ると、時間はもう日付を越えようとしていた。
「シャワー、浴びないと。」
靴を脱ぎ、そのまま脱衣所へ向かう。シャワーを出し、お湯が出るのを待っている時、何気なく洗面台の鏡を見た。
「…酷い顔。」
良く眠れない日が続いていた。何も考えたくないのに、苦しくて苦しくて、眠れなくて、どうすればいいのか分からなくなっていた。
全て自分が悪い、自業自得だと自分を責める。それは事実であって、嘘でもあった。そうして自分を守ったのだ。これで僕は、誰にも傷付けられない。どんなに惨めで身勝手でも、もうこれ以上、傷付きたくなかったのだ。鏡に映る自分に触れ、拳を握り鏡を叩く。
「こんな僕を好きだなんて…、そんな事、あるはずない!」
泣き叫びながら、何度も何度もそこに映る自分を叩き続けた。
結局その夜は一睡も出来なかった。朝になり、ベッドから起き上がろうとしたけれど、今日は休日だという事を思い出し、また布団の中に潜り込んだ。しっかりと目を閉じ、小さく丸まる。
僕はこんな人間だったんだろうか。暗闇の中に落ちて行く様で、怖くて堪らない。好きな人が自分をすきではなかった。それだけの事なのに、こんなにも僕の心は弱り、壊れて行く。
暫くそうしていると、遠くで携帯の着信音が聞こえた。今度こそ起き上がると、テーブルに置かれた携帯を手に取る。
「もしもし。」
「…俺だ。こんな朝早くにごめん。でも、どうしても言いたい事があって、頼むから聞いて欲しい。」
僕は何も言わなかった。
「昨日話した俺の気持ちは本当だ。今まで散々我慢させて、傷付けて来たんだ、直ぐに信じてくれとは言わない。でも、お前への気持ちはずっと変わらない。」
耳に当てた携帯を握り締める。
「俺は、お前を諦めたくないんだ。」
彼の言葉に目を見開いた。
僕は、彼を諦めていた?
仕方ない、そう思って、変化を恐れて現状に満足しているふりをして、僕は何もしなかった。恋人でいてくれるだけでいいと、僕は最後まで彼と向き合う努力をしなかった。彼の優しさのせいにして、ずっと逃げていたのだ。そして今また、僕は逃げ出そうとしている。
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