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悩み、相談。にしおりをはさみました!
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悩み、相談。
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そして、そんなウィンクから数分後、
早々に本題を切り出した貴仁の話を聞くと
けんちゃんの笑顔は姿を潜め
ウェルカムモードだった空気はすっかり無くなり
差し出された珈琲が、本当に苦いだけのものにすら感じられる空気が新たに生まれていた。
カウンター越しだったけんちゃんは、無言でそこを出ると、
店内のカーテンを締め切り、話を聞いてから考えようと思っていた「準備中」の札を扉に出すと、
鍵を閉め、海外のビール瓶を手にしながら貴仁の隣に座った。
「車じゃないでしょ?なら貴方も飲みなさい。で、本当に本心を頂戴。」
その語尾は強められ、目は厳しいまでに真剣なものになっていた。
「…やっぱり、それはどうかと思う。と、言うことですよね?」
貴仁の確認するような言葉に、けんちゃんは
大きくため息を付くと、
理由によるわね。と言いながら飲み込んだビールで喉を鳴らした。
「……だって、アタシ相手なら兎も角、龍ちゃん相手よ?……よりによって龍ちゃん相手に、
貴仁さんのお友達に関係をカミングアウトしたい。だなんて、そんなの、困惑するに決まってるわ。」
まぁ、相手がアタシなら?
もぉー好きにすればぁ??アタシがお友達に乗り換えちゃっても知らないんだからぁー!……ぐらいで終わるけどね!
などと大袈裟な身ぶり手振りで言うものだから、クックッと吹き出してしまい、なんだか場の空気が元に戻った気がして、
やはり良い人だなぁこの人は。と改める。
そう。貴仁が考えて、悩んで、出した答えは
自分の親友や、特に親しく良くしてくれている仕事関係の一部の友人に龍希と自分の関係をカミングアウトしたい。というモノだった。
そして、それをそのままけんちゃんに相談したのだ。
和んだ空気のおかげか?
冷たく耳に届いていたけんちゃんの声が変わらずいつものように届き始める。
「……貴方はストレートの人だし、先に言っておくけど、
アタシ達はね、別にカムアウト至上主義でも何でもないの。いい?カムアウトなんて、どんだけ理解が有ると確信しててもしたくない人も居るのよ?
……それほど必要無いの。どっちでもいいやって程度で考えてる人も沢山居るの。
カムアウトこそ理解。だとか、そんな考えはいい迷惑。それだけは勘違いしないで頂戴。」
そこで一息入れ続く
「そもそも、理解が無理ならしなくていいのよ。
ピーマンが嫌いな人にピーマンが食べられないなんて人生損してる。とか、おかしいでしょ?
それと同じ。認める事を強要してる訳じゃない。無理なら無理に認めんなって言ってるの。」
そこまで言うと、
ちょっと喋りすぎたわ。
などと言いながら、カミングアウトの話を持ち出し、
それが、どうしても理解して欲しい事の1つだとして挙げると、けんちゃんは本題に触れた。
「……で?理由ね。理由が聞きたいわ。友達にカミングアウトしたい。なんて、興味の対象を増やしたいって思われても仕方ないわ。
自分の味方を作りたい、自分の抱え込んだ龍ちゃんとの関係から逃げられる脇道を作っておきたい、みたいなね。違う?
カミングアウトをする事は自己満足だけでは無い?」
自分の味方を作りたい。
その言葉に貴仁は、少しだけドキリとした。
そうとも考えられる。確かにそうだ。
勿論それだけでは無いが、味方が欲しい。友人達に話して安堵したい。という気持ちも有るのではないか?
そして、万が一良い方向で理解されなかった場合、興味の対象を増やすだけになるのではないか?
その可能性は、ゼロではない。
貴仁は受け取っていたビールをゴクゴク飲み込み、彼にしては珍しく、
視線をそらし、俯いたまま話をはじめた。
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