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「んっ!」
その冷たい指先で脇腹をなぞり上げてくる。
「ねぇ。……あたしを、選んで、くれたんじゃ、なかったの?」
吐息が背筋にやわらかく当たり、この身体はピクンと跳ねてしまう。もう感じたくなんてないのに。
葛藤する俺のことなど知らず、ケティは背中に額を擦り付けてきた。まるで甘えてくるネコのように。
「……た」
長い髪が、サラサラと肌をくすぐる。
「……た……く、み……」
やがてその唇から漏れたのは、兄さんの名前だった。
「たく、っ……み……。たくっ……」
何度も何度も。求めるように。
今のケティは、俺が知っている容赦のない悪魔ではなかった。
恋人が応じてくれるのをしおらしく待っているかのような――。
「たく、み、……お願、い、だから……」
けれど、彼の夢の中では拒絶され続けているらしい。
「……ねぇ、ってば……」
撫でる指先の動きも次第に力がこもっていく。
「……っ」
どうしたらケティが夢から覚めてくれるだろうかと思いをめぐらせる。どうしたら俺が兄さんではないと、気づいてくれるだろうか。
「ケ――」
少し大きめの声で彼の名を呼ぼうとした――その瞬間のことだった。
カチリ、と、ドアノブを回す音がした。
密閉されていた空気が漏れるように、扉が開かれる。
「……」
その瞬間、ケティはゆっくりと上半身を起こした。
まるで俺の身体から抜け出し、羽化する虫のように。
その動きに躊躇いはなかった。
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