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the sameにしおりをはさみました!
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the same
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話が終わり、少し休憩を取ることになった。
俺はいつも通り笑いながら「ちょっくら睡眠貪ってくるわ!w」とホールの隣の部屋に移った。
カチャ、とドアを閉めたのを確認してからずるずるとその場に座り込む。
俺にしては珍しい長い長いため息が口を割って出ていく。
よかった。本当によかった。
俺の心配をよそに青峰は受け入れられて、ついでに胸の取っ掛かりも取れたみたいだし。
いやー、俺も体張って連れて帰ってきた甲斐があったってもんよw
違う高校に進学してバラバラになっても、あいつらなら大丈夫なんだ。久しぶりに会ったって、前と変わらないままなんだ。
これでよかったんだ。
あとは俺の胸糞悪い感情をなかったことにすれば全部元通りだ。
もう一度深く息をついてその場に寝転がった。あいつらに言った通り、寝れば気持ちも切り替わるかもしれない。
ただ、こんな状態では寝れそうにもなかった。
「あ〜〜〜…」
意味もなく声を出して、自分の声の酷さにひとり笑う。
死にかけのカラスみてぇwwww
笑ってるのに、頭の中ではさっきの事とあの日の事が順番とでもいうかのように巡ってくる。
『お前が、お前が言い出さなかったらこんなことにはならなかったんだよ!!』
『そんな理由で、俺たちが怒るとでも思ったのか!』
『なんで…なんで俺たちが!お前のせいで!!!!』
『全員でここを出る。命令だ、拒否権はないぞ。』
ああ、ダメだ。
比べちゃダメだ。人はそれぞれ違うんだから、それが当然なんだ。
大体俺には比べる資格すらないだろw
俺は許されなかった。青峰は許された。
それだけ。
「てか、青峰は一緒にいたいがためにこうなって、俺はただ楽しみたいがためにこうなったんだから当然だろw状況が違うんだっつーの…」
自分に言い聞かせるようにわざと口に出してみても、心の中の虚しさは無くなるどころか増えていく。
「ぐぁぁ〜〜〜〜!」
「何故気持ちの悪い奇声を発しているのだよ。」
ほぇ?え、え?
「真ちゃん!?」
俺がいるせいでドアがあんまり開けられない中、顔だけを出して心底引いたという表情を見せる真ちゃん。
どうぞお入りなさいとでも言うようにゴロゴロ転がりながらドアから離れると、真ちゃんはするっと入ってドアを閉めた。
「どしてこっちに?」
俺としては青峰と積もる話でもあるかなって意味でもホールから出たんだけど。
「…先程青峰が話していた時、様子がおかしかっただろう。一応…心配しなくもない様子だったから来ただけなのだよ。」
俺としてはその反応が予想外すぎて秒遅れでそれを理解した。
お、おおww貴重なツンデレをどうもありがとうww
「大丈夫だいじょーぶ!青峰の話でみんなが怒んないか心配だっただけだってwでも気遣いありがとw」
そんなにわかりやすかったのか俺。自慢のポーカーフェイスどこいったのw
心配しなくても大丈夫だと言って笑うと、真ちゃんはどうしてか少し機嫌を悪くした。
どかっとその場に座った真ちゃんが、睨むようにこっちを見てくる。
それが見透かされてるように思えて、何となく目を逸らしてしまった。
「…お前の嘘は分かりにくいようで分かりやすいのだよ。」
あれ、バレた?
そう思いつつも悟られないように姿勢を直して、真ちゃんと向かい合うように胡座をかいた。
「なにそれー?w俺嘘なんてついてないってww」
「ああ。嘘というより、隠しているだろう。」
おっと。
確信をつかれて小さく肩が揺れた。それが真ちゃんにとっては肯定の意味で、俺を睨んだままの眼光がさらに鋭くなった。
「何を隠しているのだよ。」
「…何って、別に…」
また頭がぐるぐるといらない回想を始めてくる。嫌なところばっかクローズアップしてくる記憶は煩わしい以外の何者でもない。
ああ、違う、違うんだ。
別にそこだけがあいつらの全部じゃない。不器用なのに優しいところも、見てるだけで楽しくなるようなところも、全部含めてあいつらなのに。
俺の記憶が、俺が、それを全部ぶち壊してくる。
「高尾。」
名前を呼ばれて、ゆるゆると視線を合わせた。きっと今作ってる笑顔は下手くそな失敗作だ。
「お前が今何かに苦しんでいるのはわかる。でも、何に苦しんでいるのかもどうして苦しんでいるのかも、俺にはわからないのだよ。…俺では力になれないのか?」
…どうして。
どうして言っちゃうんだ。
真ちゃんが頼りないわけじゃない。それは決してない。きっと話しても真ちゃんは変わらないしだからなんだと言ってくれる。
でも話したら最後、俺は自分の気持ちを認めなくちゃならない。それは──あいつらへの、裏切りでもあるんだ。
「…真ちゃんはもう十分力になってくれてるよ。他の奴らだってそうだ。正直、こんなに信頼できる奴らはそうそういないって思う。もっと早くに違う場所で出会ったら…そう考えるのも、楽しいもんだ。」
でも、真ちゃんが出会ったのはホールにいるやつらで、俺が出会ったのは一緒にこの世界に来たあいつらなんだ。
「確かに俺たちが生きていたあの世界では出会っていないのだよ。だが、ここで出会っただろう。それだけではダメなのか?」
俺の頭では考えつかなかったことを言われて思わず目をパチパチと瞬かせた。
「出会った場所はそんなに大事か?出会った時期がそんなに大事か?大事なのは、出会った事実ではないのか?」
出会った、事実。
そう…なのかもしれない。
場所や時期がなんであれ、出会って一緒の目的があるならそれはチームだ。だから真ちゃんも俺を心配してくれた。
「こうしてお前と話をしているからこそ、何かを隠していることを知ってそれが何かを確かめたくなっているのだよ。…それでは、ダメか?」
ここで初めて真ちゃんが心配そうな顔になった。
マジで俺を心配してくれてるのか。
俺は、話してもいいのか。
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