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不足
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部屋についても心臓がバクバクしたままで、どうしてこんなに痛みを訴えているのかわからない。
いやいや、これは運動不足のせい。
そのはずだ。
30歳を過ぎた頃から、駅の階段を駆け上がった時とか、たまに現場を見に行った時の炎天下なんかに、体力の衰えは実感していた。
心臓が痛いのはそのせい。
それに加えて昨日から無茶なセックス…
体力衰えてるとこに無理し過ぎだ。
顔を洗おうと洗面台に立って、自分が優也さんの部屋着を着たままだった事に気付いた。
これくらい、もらってもいいよね?
優也さんが欲しいなんて、もう望まないから。
いい思い出として…
ズキズキする胸を押さえて布団に倒れこむ。
どうなりたいと願ったわけでもない。
初めから出会わなかった事にすればいい。
_やっぱり試す間でもなかったな。オマエは幸せになんてなれない_
わかってる。よくわかってるよ。
自分の人生に少しくらいの希望があったのかと期待した分、落胆が大きい。
_うまくやれもしないのに、他人と関わろうとするからだ_
その通りだと思う。
影の言う事はいつも当たる。
自分の方こそヤリたいだけだった。
そう思えばいい。
いい相手にたまたま遭遇した夜だった。
ただ、それだけ。
送り迎えをしてもらった事にお礼を言えなかったのは申し訳ないけど、もう会う事もない。
実家を出てこれまで人肌なんて求めた事はないし、必要だと感じた事もない。
どうしても欲しいなら探しに行けばいい。
欲望を満たすだけなら、何とでもなる都会に住んでいる。
金銭でどうにでもなる世の中なのだから。
その為に人が集まる街がある。
”男を買う行為”は誰からも咎められる事はない。
その行為でこの体を満足させたとしても誰からも文句を言われない。
一度だけ、”買うために”行ってみた事がある。
昨夜、経験したセックスはまるで違うものだったけれど
欲望を吐き出すだけならそれで充分。
それ以上を望むべくもない。
今回はそうでもしなければ、この心臓の痛みに引っ張られてしまう。
恋だ愛だと意味のわからない単語に翻弄されるのはまっぴらだ。
体さえ満足できればそれでいい。
それでこのモヤモヤを忘れてしまおう。
同性とのセックスでしか感じない体。
生まれつき僕が淫乱だったとしてもこれはもう治しようがない。
快楽の為にする事は誰としたって同じ、だろう?
どうせ僕は経験人数も多くないし違いがわかるわけもない。
優也さんとあんなに乱れたのは久しぶりだったから
セックス一つで蕩けるような気分になったのは単純にとても丁寧に扱われたから
”スキダ”なんて嘘ばっかり。
自分が言われるはずもない言葉。
何にも聞きたくない。
”シュウ、スキダ”
空耳が聞こえたような気がして布団を被って耳を塞ぐ。
やっぱり僕は、誰とも関わらずに過ごすべきなんだ。
誰の事も信じない。
誰にも心を開かない。
誰の人生とも深く関わらない。
それを変えてはいけないんだった。
忘れてはいけない。
僕は醜い。
心も体も。
遠くで携帯が鳴っている。
でも、もうどうでもいい。
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