アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
苛立ち_優也2にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
苛立ち_優也2
-
突然呼び出された事も、俺が親会社の社長だという事だって驚いただろうに、そんな素振り微塵も見せずに鉄壁の笑顔で素顔を隠したまま、ここへやってきた。
それを見た時に、本能的な何かで押し倒してしまいそうな体をぐっと堪えた。
来週になれば毎日だって側にいられる。
昨日みたいに腹立たしい事はもう起こさせない。
隙があるから腹がたつなら、隙をつくらせなければいい。
俺の秘書だと周知しておけば、ホイホイ手を出す馬鹿は少ないだろう。
近くにいれば危険からだって庇える。
やけに満ち足りた気分になって俄然仕事にもやる気が出ていた。
溜まりにたまった決済の山を片付けながら、そろそろ愁を迎えに出ようとした時アヤから電話がかかってきた。会社の前にいるからと。
こんな早い時間に連絡をよこしてくるのは珍しい。
アヤとは父親同士が友人で、高校生の頃に知り合った。
妙な色気のある、やたら美形な男。
忙しく社会的立場のある父親とキャリアウーマンの母親という似通った家庭環境。
将来を考えても仲良くなって損はない相手だった。
それ以上に、同年代の女友達にはない落ち着いた色気と豊富な経験。
ゲイなんだという告白を聞かされて、アヤの失恋を慰める流れで初めて体を重ねた。
その頃には自分がバイだと自覚していたし、そんなにおかしい事だとも思わなかった。
アヤに彼氏がいて俺に彼女がいても特に変わらない、気が向けばセックスをする。
そんな関係がズルズルと続いていた。
正直、女達の煩わしさに辟易していた俺には手のかからないありがたい存在だった。
だが今回だけは違う。
愁に近付けたくはないし、俺自身アヤとの性的接触はしないと決めていた。
そのつもりで、しばらく家にこないようにメールしたのだか、よりによって愁がいる時に上がりこんできた。
その上、知らない間に愁の方が1人で帰ってしまっていた。
「平日の夜なんだし早くお家に帰してあげなきゃかわいそうだよ」
とアヤに言われて、それもそうだとも思った。
昨日からアヤのタイミングの悪さは絶妙だ。
慰めてほしいというアヤを邪険にもできずにイライラしながら、埋め合わせは必ずするという約束でようやく断った時には約束の時間を過ぎていた。
急いでGPSを確認した時にはもう、居場所を示す光は地図上の会社内にはなかった。
故障かと思って電話をかけると圏外のアナウンス。
都内にいて電波の届かない場所なんて限られているし、電話に出るようにとわざわざ言ったばかりなんだから、電源を自分から落とすはずがない。
連絡もできないような状況…
慌てて検索をかけて探し、会社のある港区内のホテルにGPSの光を見つけた瞬間、全身の毛穴が開いたような気がした。
怒りでも悲しみでもなく、目の前がまっ黒に染まる感覚。
ただただ、憎しみだけが体から溢れているのがわかる。
奏介に協力を仰ぎ、信号もすっ飛ばして目的地に向かった。
愁の自衛能力が著しく低い事はわかっていた。
だからGPSを渡しておいたのが結果的に役立っただけで、それがなければ今頃…
ギリリッ
奥歯を噛み締める。
まだ正式に決まってすらいないから愁の顔が広く知られているわけじゃない。
愁の個人的な問題なのか?こんな事が日常的に起こるわけじゃないだろう。
俺が呼んだりしなければこんな事にはならなかったのか?
とにかく愁がさらわれて怯えている事は間違いない。
それを考えるとハラワタが煮えくり返る。
俺達が部屋に到着した時に愁は、最初に会った時のように真っ青な顔をしていて、その瞳には何も写していなかった。
気が狂ったみたいにうがいを続ける後ろ姿が今にも折れてしまいそうで。
ごめんなさいと謝る愁を直視できなくて、二度と手離さないように固く抱きしめた。
すてないで
大粒の涙を流しながらそう言われて一瞬、何を言われているのかわからなかった。
すてる?俺が、愁を?
そんな事あるわけがない。
どこでどう間違ってそんな解釈になってしまうのか、愁の思考回路は一体どうなっているのか
もっと早くに手元に置く手はずを整えるべきだったのだ。
昨日感じていた危機感。あの時に全てを整えておけばこんな事にはならなかった。
迎えに行った会社の駐車場で愁の腕を掴んでいたヤツをあの場で叩きのめせばよかった。
後悔しても遅い事はわかっていても悔しくて
俺が守ってやると言ったその日のうちにこんな事になるなんて情けなくて
謝った自分の声は情けないくらいに震えていた。
それなのに
一番苦しい思いをした愁は、泣きながら俺に笑顔を向けたんだ。
泣かないで。と。
頭をガツンと殴られたような気がした。こんな酷い目にあっておきながら俺をなだめるのか。
こんな状況で笑う必要なんかないって叱りつけたかった。
自分の腕の中で見た愁の笑顔を見て、自分の無力さを思い知った。
今の俺は、愁よりずっと弱い。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
46 / 155