アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
お出掛けにしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
お出掛け
-
奏介さんの運転する車に乗って優也さんと区役所に行き、言われた通りに住民票を移す。
平日の午前中だということもあって、比較的スムーズに用事を終わらせる事ができた。
逃げるように上京して、初めて一人で部屋を借りた街。
大きな歓楽街を中心に外国人も多い地域だった。
生きて行く事に必死だった僕はアルバイトをいくつも掛け持ちしていて、バイト先と部屋との往復の毎日だったから、特に思い入れもない。
でも、どこの馬の骨かもわからないような人間を住民として受け入れ、職場と部屋の紹介までしてくれた。
都会だなぁ。
右も左もわからない状況で、漠然とよくそう思った。
他人に深入りする事なく自分の生活だけを守る。
近所付き合いをしなくても不審な目で見られないし
何時に帰宅しようと、ご飯を何度食べようと、誰からも叱られない。
24時間の全てを1人で過ごす事が出来る。
誰とも関わりたくない僕には楽しい生活だった。
永住してもいいくらいの気持ちで住所変更をした次の日、夏彦が部屋の前に立っていた。
今でもゾッとする。
冷たい空気。苛立った声。振り上げられる腕。
暴力に軋む体。
コレハバツナンダヨ
繰り返し言われるセリフ
床に蹴り飛ばされ、蹴り上げられて
壁に何度も打ち付けられて
意識が飛びそうになるとカッターの刃で脇腹を傷つけて血を見せられる。
逃げられたのはパトカーのサイレン音のおかげだった。
壁や床が極端に薄いアパートだったのが幸いして、近所の人が通報してくれたのだ。
性的な暴行はされなかったものの怪我はひどく、救急車で運ばれた。それでも意識はあったから応急処置をしてもらってすぐに帰宅して引越した。
「黙り込んでどうした。懐かしいか?」
優しい声をかけられてハッとする。
「いくつか掛け持ちしたバイト先と部屋の往復でしたから…。」
慌てて笑って見せると、頭を撫でられた。
「ずっと一緒にいような。」
向けられた視線は優しくて
ずっとずっとこのまま一緒にいられたらいいのに。
そう願った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
99 / 155