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18歳以上ですか?
<7>にしおりをはさみました!
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翌日僕は早めに店にでて店内を整えた。アユちゃんのタイムカードを見たら、やっぱりいつもより1時間も帰る時間が遅い。
僕はコーヒーを落として念入りに掃除をして重さんを待つ。
「おはよ~」
「おはようございます。昨日はすいませんでした。」
コーヒーマグを渡しながら重さんに謝った。
「いや、智が悪いわけじゃないからさ。久に借りだな、まったくえらい目にあったよ。それはいいけど、お前なにかやらかしたのか?久が珍しく深刻そうな顔して連れて行ったけど。」
重さんに説明することができなかった。僕は加瀬さんとそういう関係ですって?必要だと思うならマスターが重さんに言うだろう。
「ちょっとマスターを心配させちゃっただけです。」
「そうか。」
重さんはそれしか言わなかった。
「それはそうと、夏むけになんかさっぱりとしたものがないかな。」
話は終わりとばかりに、全然違う話をはじめてくれた。ありがとう重さん。
「さっぱりとしたもの、ですか」
「野菜がメインで、原価も安く。でもちょいと気がきいた、みたいな。」
「重さんの料理は気がきいてますよ、どれも。」
「当たり前だ、俺を誰だと思っている?」
こういう時の重さんは文句なく格好いい。自分を持っている人の自己主張は魅力的だ。
僕は少し考える。自分だったら何を食べたいだろう、さっぱりとした夏野菜。
「焼きナスはどうでしょうか。」
「焼きナス?おかかたっぷりで醤油をガーっとかけて?生姜も・・・っておい。」
「少し時間をください。」
僕は焼き網を焼きながら、なすに切り目をいれていく、首のまわりを一回り。縦に6本くらい。
強火で一気に焼き上げ皮をむく。
なすを生ハムで巻いて、きざんだトマト、バルサミコとオリーブオイルをかけて、最後に岩塩と黒コショウをふった。
「こんなのはどうですか?」
「お、どれどれ。」
一口で食べ、真剣に味わっている。こういうときの重さんはプロなのだと実感する。
味を観察しているときは真剣だ。
「うまい。」
僕はうれしくなって顔が輝くのが自分でもわかった。「ありがとう」が嬉しいってミサキにいったけど、重さんが相手なら「うまいの」ほうが何倍もイイ。
「なすは冷えていたほうがおいしいと思います。ただ、なすから水気がけっこうでるので、そこがどうかと思うんですけど。」
「焼いた後、冷やしている間に水気はおちる。淡白な味のなすだからバルサミコでドレッシングをつくるより、直接かかっているこのほうがいいだろうな。醤油味が少しあってもいいし。」
「盛り付けは青物がほしいけど、ハーブの香りはいらないような気もして。」
重さんとあーでもないこーでもないと話あっていたらマスターがやってきた。
「うーっす。お前ら随分楽しそうだな。」
マスターはむくんだ顔をしてのっそり近づいてきた。
「久!昨日はひどいめに・・・。お前、また随分男前な顔になってるじゃないか?」
重さんが大笑いしてマスターの頭をたたく。
「やめろ!頭も痛いんだよ!」
「マスター昨日はごちそうさまでした。」
「あ、智おはよ。てか随分さわやかだな。年の違いは肝臓の違いか?まったく。」
「あれから飲んだんですか?」
「仁に説教されながらな。金を払わされて、説教されて。あげく二日酔いだし。最悪だ。」
「久、仁のとこにいったのか・・・。」
「うん。」
そこで二人の会話が止まった。重さんは何か思うことがあるんだろう。
僕は何も言わず、焼きナスを片づけはじめた。
「それメニューにするから、アイディアありがとな。」
重さんの言葉が沁みてくる。
僕の日常はここにある。
ミサキがいなくなっても僕には生きていく場所がある。その確信は安堵と、深い寂しさを気付かせる。
ミサキは僕の生活にいない・・
ミサキの「加瀬」の生活にも僕はいない・・
僕達は互いに存在しなくなる。
もうすぐ・・・
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