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お宅訪問 4にしおりをはさみました!
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お宅訪問 4
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「そんな事を言ってくれるのは、日坂くらいだよ。」
そう言う牧野の顔には陰りが見えた。それを見て、俺は今まで気になっていたけれども聞けなかったことを聞こうと思った。
「なあ、牧野。」
「ん?」
「何でいつも一人でいようとしてたの?」
優しげに俺を見つめる瞳を見れば、逃げるように目をそらしてこう言った。
「俺は、日坂とは違うんだ。」
まただ。
「違わないって言ってるだろう。てか、何が違うんだよ。」
「俺は、誰とでも仲良くはなれない。それに、興味がなかったのかもしれない。」
「興味?」
「そうだ。本が読めればそれでいいと思っていたし、仲良くしようとしてくる奴も俺がずっと素っ気ない態度をとっていれば次第に関わりを持とうとしなくなった。だが、俺はそれで良かった。」
そう言えば、俺が初めて牧野と話した時も素っ気無かった。
「俺もだよ。」
「え?」
「牧野だけじゃないよ。」
俺がそう言うと、どういうことだと首を傾げる牧野。
「俺だって、みんなとそれなりに仲良くなれたけれど、でもそれは誰とでも平等に接してきたからだ。正直つまんないと思うこともたくさんあった。最初は興味もない人とでも話す。俺の居場所が、欲しかったから。」
「居場所?」
「そう、一人が怖かった。だから、二年生の初めにずっと一人でいようとする牧野を見て不思議でたまらなかった。」
初めて牧野を知った日、一人でも平然としている姿を見て驚いた。いろんな奴が自分の居場所を探し彷徨い、作ろうとしていたという時期に一人で誰とも関わろとしない。焦りもなく、一人でいるということが当たり前だとでも言いたげなその姿。
クラスメイトは俺と牧野が正反対だと言った。
クラスメイトの考えるものとは違うが、そうかもしれない。
俺は、周囲が思うほどに出来た人間じゃない。
俺は温厚じゃない。
俺は人懐っこくない。
俺は本当は誰とでも仲良くなりたいんじゃない。
居場所がないと、不安なんだ。
臆病で居場所を常に探し続けてブレる俺と、自分に素直で己をしっかりと持っている牧野。
その点では、違うのかもしれない。
だが、牧野の考える「違う」点はないのだ。俺にだってあるのだ。
「なあ、牧野。」
俺が牧野の名前を呼ぶと、逸らされていた目がこちらを向いた。しびれが引いた足で体操座りになり、牧野を直視した。
「牧野に、俺の特別を……あげる。」
「誰でも」は、「特別」という概念がないからありうるもの。でも、俺の特別を、牧野にあげる。
だから、俺とお前との間に隔たりを作るなよ。
違うとか言うなよ。
虚しいじゃんか。
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