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オネエ系男子、出陣にしおりをはさみました!
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オネエ系男子、出陣
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「…あーあ。」
どでかい校門の前、立ち尽くす。
「いくらあの人との約束だからって、アタシ、早まったかしら…」
アタシの名前は藍川玉緒(アイカワ タマオ)。
ちょっとオネエな17歳。なぜそんなアタシがこんな場所に居るかというと、それは大事な人との約束のせい。
時間を少しさかのぼること、2週間前。
「…は?ちょ、今なんて言ったの?」
「だから、おじさんの古い知り合いに理事長やってる奴が居るんだけど、そいつに玉ちゃんのこと話してみたら試験さえパスすればすぐ編入OKだって言われたんだよ。はい、これその試験問題。」
「…色々突っ込み所多いんだけど、まずなんでアタシがその学園に入ること前提なわけ?」
「え?だって玉ちゃん…高校は卒業しといた方がいいよ?」
「そんなことわかってるわよ!でもだからって編入?!別にアタシ今の学校でいいんだけど?!」
「だめだよ。玉ちゃん学校全然行ってないじゃない。」
「う…でも、出席日数はちゃんと稼いでるわよ!」
「それじゃあ卒業はできても意味無いでしょ?僕はね、玉ちゃんには学校生活を楽しんで欲しいの。今の学校が玉ちゃんにとって楽しくないってことは僕にもわかる。だから、玉ちゃんが楽しく過ごせる場所に行かせてあげたいんだ。」
「待ってよ。源ちゃんのその気持ちは嬉しいわよ?嬉しいけど、あたし別に元々学校なんて興味無いのよ。正直源ちゃん泣かせたくないから出席日数だけ稼いでるだけだし、アタシとしては中卒でも全然オッケー。ていうか、どのみち二丁目で仕事するつもりだったしぃ」
「そんなのだめだよ!僕は玉ちゃんが二丁目で働くことに偏見も異論もないけど、でも働くにしても何も今すぐじゃなくていいでしょ?せめて高校だけは卒業しとこう?ね?」
「…わかったわよぉ…でも、じゃあ今の学校にこれからちゃんと通えばいいんでしょお?編入なんておかったるい話はナシよ、ナシ。」
「それは無理だよ。」
「はい?」
「だって今のままだと玉ちゃん僕に学校行ってるフリしてサボるでしょ?だから、どうしたってサボれない状況にしちゃおうと思って、もう学校には話つけておいたんだ。」
「ちょ、なに言ってんのよ?」
「だから、玉ちゃんは早くこのテストして!僕の友達にすぐ送ってすぐ入学手続きしなきゃ新学期間に合わないよー!」
「あ、あんた、なにしてくれちゃってんのよおおお」
「玉ちゃん、ごめんね?でも僕ちゃんと玉ちゃんが新しい学校で楽しく過ごせるように色々考えたから、安心してね!」
「…このバカ!」
結局アタシはこうして入試試験を受けて無事にパスした。
そして慌ただしく入学のための準備に追われたのだ。
まさかその入学する学園が全寮制で、元居た場所から遥か遠い場所だなんて知りもせず…。
それを知ってアタシがまたブチ切れたのは言うまでもない。
「ちょっと!何よこれ!」
「?何って、新しい学校のパンフレットだよ?」
「そんなん見りゃわかるわよ!そうじゃなくて、この学校バカっ遠いじゃない!どうやって通えって言うのよ!新手のいじめ?!」
「あれ?話してなかったっけ?玉ちゃんはその学園の寮に入るんだよ?」
「………はあ?!」
「あれー、伝え忘れてたかな?ごめんね?」
「あんた、あんたねえ…!」
「あ、でも大丈夫。ほら、僕が荷物も纏めといたし、後は郵送するだけだから☆」
「馬鹿野郎おおおおおお」
好きな相手から離れて暮らすことになるって知ってたらアタシだって死ぬ気で抵抗したわよ。
それもこれも今までのこと許せてたのは彼がアタシのことを心から心配してくれてるのがわかってたから。
なのに、なんなのよこの仕打ちはっ。
「あとね、玉ちゃんが新しい環境で馴染めるようにって僕なりに色々考えたんだー。まずね、玉ちゃんのそのトレードマークのオネエ言葉、やめよっか。」
「…は?」
「個性的でいいと思うんだけどねー。でもさ、今時の高校生の中に混じるにはちょっとキャラ強いでしょ?だからね、玉ちゃんは今から自分のことはアタシじゃなくて『俺』。語尾もわよ、じゃなくてだろ、だぜ、ね!」
「あんたねえ…いくら可愛い可愛い源ちゃんでも、アタシもいい加減怒るわよ?」
「だから、アタシじゃなくてー『俺』。」
「…」
結局この能天気三十路天然野郎には全くアタシの話は通じなかった。
状況を覆すことも諦めたアタシは妥協に妥協を重ねて言うことを聞くことにした。
ただし、3つの条件付きという約束で。
「その1、アタシが居ない間に他人と2人きりにならないこと。その2、月1で必ず会う日を設けること。その3、アタシが全ての約束を守って卒業したらバリ島行って即結婚。」
「あはは、タクシーの運転手さんでもダメ?」
「だめ。歩いて帰るのね。第一あんたタクシーなんざ乗らないでしょ」
「じゃあ、遠いから3ヶ月に1回じゃだめ?」
「だめ。月1絶対会いに来なさいよね。約束破ったらもっとえぐい内容にするわよ」
「…じゃあ、最後のは冗談だよね?」
「冗談なわけあるかボケ。」
「えー」
「とにかく、アタシはあんたとの約束の『入寮する』『卒業する』『オネエなこと隠す』を守るんだからそのくらいしなさいよね。」
「うーん、なんだか僕の方がリスク高いような…とくに3番…」
「…なにか文句でもある?」
「ないです。じゃあ、玉ちゃん気をつけてね?身体壊さないでね?喧嘩しちゃだめだよ?あと、いきなり男の子襲っちゃだめだからね?」
「わかってるわよ。別にそこまで飢えちゃいないわよ…卒業したらあんたを襲うけどね。」
「わかってるならいいんだよ。じゃあ、元気でね。帰って来たらバリ島で結婚しようねー!いってらっしゃーい」
「…っ…あいつ絶対本気だと思ってないわね…覚悟してなさいよ!アタシの卒業と同時にあんたの処女卒業させてやるんだからね!」
と、ちょっと危ないことを考えながらアタシは旅立ったのだった。
そして今目の前に広がる馬鹿らしい程豪華な学園の門の前、深いため息をついていた所だったというわけ。
アタシにだって色々あったのよ。
それもこれもあの子憎たらしい三十路天然男のせいで。
あー嫌んなっちゃう。
アタシのトレードマークと言ってもいい程お気に入りだったじゃらじゃらなるほどたくさんのアクセサリーだらけだった腕も指も、今は何にもなし。
奇抜な服装を好むアタシにはあり得ない程ちゃんと着こなした制服。
元々化粧はそこまでしてなかったけど、派手な色のアイシャドウすらつけれないなんて。
普通の男ってなんてつまんないのかしら。
髪の毛も前みたいにゴテゴテ飾り付けらんないからワックスでセットしてるだけだし、ほんと、つまんない。
準備にかかる時間は大幅に減りはしたけどね。
でもそんなの着飾るのに時間をかけることが少しも苦じゃなかったアタシにしてみれば、ラッキーでもなんでも無い。
でもそんな苦痛の努力のおかげで今のアタシは外見上は立派な普通の男子高校生。
しかもかなりイケてる部類のね。
全く自分でも自分の素材の良さが恐ろしいくらいだわ。
そんなこんなでこれから2年オネエを封印して過ごさなきゃいけないんだと思うと最後に二丁目で大騒ぎくらいしてくればよかったわとちょっぴり後悔。
でも源ちゃんが言ったんだもん。
ちゃんと卒業できたらバリ島で結婚してね(←事実とだいぶ異なる)って。
待ってるね(←そんなこと言ってない)って。
そんなこと言われたら、アタシだって男だもの。
全身全霊で期待に応えてみせるわよ!(←何度も言うが誰もそんな期待はしていない)
というわけで、とりあえず癖になってしまったシナを作る動きを気合いで止めて、女言葉も封印。
アタシは男。
ジャ○ーズよ、○Pよ、キ○タクよ!と暗示をかけて頬を叩いた。
「…っし。行くか。」
いざゆかん、バリ島。
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