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君の話を聴こうか、[初詣]にしおりをはさみました!
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君の話を聴こうか、[初詣]
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年が明けて正月、初詣の約束の日。
本当に行かないのか?
思わず紅葉に確かめる。本来なら僕達と真琴、加賀と能戸さんのメンバーで行く予定だった。でも、紅葉は急に渉の家へ行くと言いだした。
うん、僕はもう手を引く。
さっぱりとした表情。ああ、紅葉はやっぱり気持ちの切り替えが早い。僕が動き出せないまま足踏みしてる隣で、もう新たな一歩を踏み出してる。
分かった。渉に宜しく。
うん。
紅葉は、僕を急かしたりしない。もう止めるべきだとは言わない。
いつもそうだ、紅葉の事を一番知ってるのは僕。そして僕の事を一番知ってるのは紅葉。だから、僕達は支え合い助け合う。
楓、
紅葉、
名を呼び合う。紅葉の腕が僕を抱く。僕も紅葉を抱き締めた。
ゆっくりでいい、楓。
うん。
出店の並んだ境内を進む。目の前には、仲良く並んで歩く真琴と加賀の背中。そして、僕の隣りには能戸さん。
真琴がたこ焼きの出店を指差して後で食べたいと、笑顔で加賀に伝えている。加賀は頷いて、真琴に笑いかける。…何か、ここに居るのが馬鹿らしい。大体、隣りに居る奴も気に入らない。
楓は何を祈願すんの?
いきなり隣りから話し掛けられた。真琴と紅葉の友達でもあるし…無視する訳にもいかないから一応答える。
まだ、決めてないけど……能戸さんは受験生だから、合格祈願ですね。
うんまあね。てっきりさ、まことっちと加賀が別れる様にとでもお願いしに来たのかと思ってた。
ジロリと能戸さんを睨む。今、不機嫌な顔をしていると自覚出来る。そんな事を神頼みするつもりはない。真琴が悲しむ様な事は、もうしたくないんだ。
神頼みして何とかなるのなら、この心の中にくすぶる恋心を消し去ってほしい。そして、兄弟として家族として兄を純粋に慕うんだ。
そんな願い事はしません。僕が今日ここに居るのは、あくまで真琴が心配だから。加賀は個人的に嫌いだし、能戸さんはどう考えても信用出来ない。いつ気が変わって真琴を襲うか分からないでしょう。
腹が立つままに、とげとげしい口調になる。嫌味の一つも言わないとやってられない。
ふうん…。楓のそういうところいいね。そんなに毛を逆立てて過敏に反応して……可愛いな。
ゾワッとして鳥肌が立つ。ああ…もう。本当に気に入らない。この、人を馬鹿にした感じの物の言い方!
気持ち悪…、
堪えきれずに小さい声で呟いた。周りには参拝客が行き交っていて、ざわざわしている。けど、能戸さんは僕の声を聴き取ったかの様に、口の端を上げてにやりと笑った。ほんっと、気に入らない。
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