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君の話を聴こうか、[校門前]
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僕と紅葉は、放課後に交代で真琴を迎えに行く。加賀と付き合っているのは分かっているけど、奴はまだ大学の受験を控えていて、真琴をうちに送る程の時間的余裕がない。高3だし、1人でも帰れるって分かってるけど…真琴というのは、何というか…危なっかしい。
先月、12月のいつだったか…うちの学校の1年生の杉山夕夜を公園で拾って帰って来た事もあった。彼はその容姿の所為で有名で、まあ美少女顔ってやつだが、真琴は外見で人を判断しない。杉山を拾ったのも壺を悲しそうに見てたからとか何とか…とにかく、こんな調子。
楓!
Y高校の校門前に立って待ってたら、渉の手を引いた真琴が手を振る。いつもよりもゆっくりとこっちへ向かって来た。何故か、渉の荷物持ちをしている加賀が後ろから付いて来ている。よく見たら渉は眼鏡を掛けていない。
どうしたの。
僕の前に来た3人に首を傾げた。真琴が早速、渉が眼鏡を壊してしまい視界が利かなくて危ないから家へ送ると説明した。
ねえ、それなら俺が送ろうか?鳥海の家は知ってるし、割と近いよ。
タイミング最悪。いつの間にか近くに来ていた能戸さんが言う。思わず渉を見た。ちょっと肩が揺らぐ、ああ…不味い。
いえ、1人で大丈夫なので…。加賀さん、荷物持って貰って有難うございました。桜井さんも、誘導して貰って済みません。助かりました。
そう言って加賀の方へ手を差し伸べて、渉は鞄を渡してもらう。よろよろとギリギリで人を避けながら歩き出す、もう見ていられない。僕はその腕を掴んだ、同時に反対側の腕を掴む手、
鳥海、送るって。そんな足取りじゃ電柱にぶつかるか、犬のう◯こ踏んで後悔する羽目になるよ。
能戸さんが僕の左側から言う。善意だとしても迷惑なんだよ、放してやれよ!
渉、紅葉と約束があっただろ。今日は早く帰ってくるから、うちで待ってたら?僕が手を引いてやる、勿論うん◯も避ける。
僕はイラっとして言った。渉は忘れる為に努力しているんだ、僕には分かる。きっと、紅葉も分かっている。
そういや、紅葉と約束してたの忘れてた。楓、手を繋ぐのは恥ずかしいから服を掴ませて。
渉が僕のブレザーを掴む。なら任せると言って、あっさり能戸さんの手が離れた。渉が有りもしない約束に乗ってくれて良かった。
あれ、そうだったんだ。なら3人で一緒にうちへ行こう。今日はオレが晩ご飯作るから、トリカイも食べてけよ。
こんな時は真琴の、空気を読まない、読めても怯まないっていうスキルが役に立つ。明るい笑顔でその場の空気が変わる。
あ、はい。有難うございます。
渉も敏感にそれを感じたのか、表情が和らいだ。真琴の声のした方へ礼を言ってる。
僕はチラッと能戸さんを見た、いたって普通。彼は、渉の事を唯の後輩だと思っているんだろう。僕はこの2人がどうやって出会い、どんな付き合いをしてたのかなんて知らない。
でも、渉の心の傷が浅くなって、いつか消えればいいと思う。完全に無くならなくても、痛みを和らげてくれる、そんな相手を見付けてほしい。
それは、きっと僕の、僕自身への願望。
真琴が加賀に話しかける。加賀の隣で能戸さんが、2人の話に言葉を挟んで3人で笑う。僕はその後ろを、渉と一緒にゆっくり進む。
もう、真琴にはそんな相手がいる…それは、せめてもの救いだ。加賀は気に入らないけど、本当は認めてる。だって、真琴が選んだ男なんだから。
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