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思い出す
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夜、なんとか重たい体を起こし店に向かった。
薬が効いたのか熱は下がっていたから後は気力で何とかする……
そう……いつもそうしてきたから大丈夫。
でもあんまりしんどいようだったら、明日は休みにしよう。
そう思いながら、店内へ入った。
「あ……悠さん、遅かったですね」
俺と一緒でほとんど店に出ているバイトの 元揮(もとき)君が心配そうに俺を見た。
「ごめんな……ちょっと体調悪くて少し寝てた」
そう言いながら店内を見渡す。
今日はまだ常連客が一人、カウンターにいるだけだった。目が合ったのでその常連の紳士に笑顔で会釈をした。
「悠さん大丈夫なんですか? 無理しないで下さいよ。また倒れられても困りますからね! ……はい! ここは平気だから裏で休んでてください。後から太亮(たいすけ)も来ますから……」
太亮っていうのも俺が雇ってるバイト君。この二人に助けられながら、俺はこの暇な店を回していた。
「ありがと……ちょっとそうさせてもらうわ。何かあったらすぐ呼んでね」
やっぱりダルさには敵わず、元揮君の言葉に甘えて俺は事務所に引っ込むことにした。
ソファに腰掛け、背もたれに寄りかかる。横になれるくらいデカいソファならよかったのに。
窮屈に斜めに体を任せ目を瞑っていると、元揮君が目元に冷えたタオルを乗せてくれた。
突然でちょっとびっくりしたけど、火照る頭に気持ちがいい。
「サンキュ」
「お水も置いておきますから……あ、お茶とかの方がいいですか? 本当、何かあったらすぐに呼んでくださいね。今日は一段と顔色悪いから、無理しないでくださいよ」
……お茶ね。
「ああっ! そうかっ!」
元揮君の言った言葉に突然思い出し、思わず大声を上げてしまった。まだ近くにいた元揮君は驚いて飛び上がってる。
「何ですか? もぉ〜びっくりした…… 」
「ごめんごめん、こっちの話」
凄いスッキリした。
そうだよ、あの男……見た事あると思ったんだ。
よく来る学生グループの、あの烏龍茶の男の子だ。店で見るより随分と大人っぽく感じたな。
あれ? 俺が勝手に学生だって思ってたけどもしかして違ったかな?
まぁいいや……
学生でも社会人でも、今度また来店したらお礼を言っておこう。
そう思いながら、もう一度冷えたタオルを目元に置き直し、目を瞑った。
そういえば最近、あいつ来てないな。
長年煩っていた片思いの相手を思い出す。
来ないって事は……彼氏とうまくいってる証拠かな?
仲良くしてるのを見るのはまだちょっと複雑だけど、でもたまには顔が見たい。
こう思ってしまうのは、俺が今弱ってるからか……なんて考える。
ぼんやりと事務所で過ごしていると、元揮君が俺を呼びに来た。
「悠さん、体調どうっすか? ……あの、ちょっといいですか? なんかお客さんが悠さんの事聞いてきて……」
元揮君が困ったような顔をして、俺を見ながらそう言った。
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