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別れ際にしおりをはさみました!
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別れ際
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「なんで元気ないの」
「いや、別に…」
「もう駅だよ?」
「うん、そうだね」
結局、あれからずっと手を繋いだまま、駅まで歩いてきてしまった。
真山には敵わないことを、改めて実感した俺は、テンションが下がったまま。
駅前の広場で、二人並んで壁に寄りかかる。
「寂しいの?」
「んー……」
それだけが理由じゃないんだけど…別れるのが寂しいから元気がないのも確かだ。
なんて言おう。
「…俺は寂しいよ」
ぽつりと呟く真山。
壁際、二人の陰に隠れて、ぎゅっと手が握られる。
さっきまでよりも強く。
「…うん。俺も」
気付いたら、それを握り返していて。
手が、離れたくないと言っていた。
俺だってまだ離れたくないよ。
「…ごめん、変だね。明日も会えるのに」
困ったように笑う真山。
可愛い、と思ってしまって、胸が苦しくなる。
「……真山」
名前を呼ぶ。
たったそれだけのことなのに。
息が詰まる。
泣いてると思われたかな。
「…藤川」
そっと、耳元に顔が寄せられる。
くすぐったいのを堪えて、ぎゅっと手を握った。
「…抱きしめていい?」
ちょっとだけ、掠れたような声だった。
ドキドキすると同時に、なんだか不安になる。
普段の真山なら、こんなこと聞いてきたりしないのに。
「…うん…」
小さく頷く。
俺も抱きしめてほしい気分。
あ、さっきの真山のって、もしかして…俺が人前で手繋ぐの恥ずかしいって言ったのを気にしてるのかな。
今さらだけど、なんかちょっと申し訳なくなる。
「…………」
ぎゅぅっと。
俺の体を抱きしめた。
少しでも真山の寂しさを埋めてあげられるように、俺も抱きしめ返す。
「…藤川」
人目なんて、もう気にしないことにする。
もうさっき手繋いじゃったし、今だってすでに駅前で抱き合っちゃってるし。
あぁでも、通りすがりのお姉さんたちの視線はやっぱり痛い。
見ないフリしてくださいお願いします。
「好き」
甘ったるい言葉が、鼓膜を震わせる。
顔も体も熱くて、一気に心臓が速くなるのがわかる。
せめて、今この時間だけは。
真山も俺と同じように、照れてくれてたらいいな。
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