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おにぎり (葵side)にしおりをはさみました!
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おにぎり (葵side)
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カーテンの隙間から入る白い光が眩しくて目が覚めた。
隣を見ると、リョウさんの布団は既に畳まれていて、慌てて時計を確認すると時刻は6時だった。
「お、起きた。おはよーさん」
明るい声に振り向くと、リョウさんが洗面所から顔を出していた。
「おはようございます。すいません、僕寝こけてて」
「いやいや、まだ6時やで?こっからもっちーの学校まで近いし全然余裕あるやん。
あ、俺もう終わったからここ使ってええで」
「あ、はい」
リョウさんと入れ替わりで洗面所に入り、顔を洗って髪をざっと整える。
昨日洗濯して夜のうちに干させてもらったワイシャツはもう乾いていたので、借りた服を脱いで制服に着替えた。
洗面所を出ると、リョウさんが台所に立っていた。
「僕も手伝います」
昨日から彼の好意に甘えてばかりだ。
泊めてもらったんだし、何かしないと。
「ほなフライパン代わってくれるか?」
「はい!」
喜んで代わりフライパンの中を見る。
ソーセージ8本…
2人分にしては多くないかな…?
隣に立つリョウさんに目をやると、炊きたての米からおにぎりを握っていた。
「お昼用ですか?」
「んー?ああ、もっちーのなー」
「え…」
「学校行くんやったら弁当いるやろ?あ、もしかして他人の作ったおにぎりとか食えん?」
「いえ、そんなことはないんですけど……悪いです、僕の分まで」
「ほなもっちーが俺の分握ったらええよ!
それでおあいこやろ?」
「え、はあ…まあ…」
いい具合に焼き上がったソーセージを皿に移し、リョウさんの横に並ぶ。
あ、そうか、このソーセージもお弁当用か。
と今更気づいた。
「これ、お酢…ですか?」
「あ、それ酢塩やで。酢に塩加えたやつ。うちはこれを手につけて握るんや。
酢はええでー!殺菌効果あるし、結構うまい」
「へぇ、うちは塩だけです。酢塩で握ってみようかな」
「おう!塩だけより満遍なく付けられるから握りやすいで!」
確かに握りやすい、かも。
酢のツンとした匂いが食欲をそそる。
リョウさんの握ったおにぎりはちょっと大きくて、ぎっしりしてそうだ。
リョウさん、よく食べそうだから大きめに作ったほうが良いかな。
…いや、僕の手だと無理に大きく作るより数を増やした方が良いかも…
「もっちー、味付け海苔にする?普通の海苔にする?」
「?、普通のでいいですよ?」
「関西では味付け海苔で食べる人もいるんよ。うちは普通の海苔やったけど」
「そうなんですか。結構関東と関西で食文化って違いますよね」
「なんだかんだゆーて、どの地方の食べ物も美味しいけどな!」
考えてみると、別にお互いの分を作るのではなく自分で自分の分を作っても手間は同じなのだが、
相手のことを考えながら作るのはこんなにも楽しい。
相手に自分のことを考えながら作ってもらえるのはこんなにも、嬉しい…
そういえばこの前、母さんの手料理を食べたいと一条に言われた時、母さんは嬉しそうに料理していた。
きっと、一条の喜ぶ顔を想像してたから。
他人のことを想って料理してたから。
自分のおにぎりを見て、ふと昔の母さんを思い出した。
運動会の前に、父さんと母さんと僕と弟と、四人でおにぎりを作ったことがあったっけ…
小さい手ではうまく握れなくて、ボロボロと米が崩れて笑われた。
母さんは僕の手に自分の手を重ねて、握り方を教えてくれた。
誰かと料理するのは、それだけで幸せなんだ。
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