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”-1~+1” 王子の最愛の人々 ‐4にしおりをはさみました!
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”-1~+1” 王子の最愛の人々 ‐4
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◇◇◇◇◇
静さんは、天女の家系の最後の女性。
そう称してしまうと、語弊があるかな。
佐倉の家の始まりは、天界から遊びに来ていて、きれいな気に入った池で水浴びを楽しんでいるうちに
天の衣を隠されて、天に還れなくなった天女が、犯され、孕んだ女子って伝承がある。
その天女は、各地に良くある天人伝説のように、衣を取戻し、すべてを忘れ去り、天に還ることが叶わず、
女児を生んだ際の産褥熱で死んでしまって、その呪いが、佐倉の家には罹っていると、信じられている。
その呪いは、佐倉の家に男子は生まれない。
生まれても、成人できずに、亡くなってしまう。
そんな家の、最後の本家の当主、それが静さん。
故に、一連の葬儀は、神葬祭で行われるらしい。
そもそも俺の実家は、仏教徒で、真言宗系列の、佐倉の家からほど近い、蓮妙寺ってところが菩提寺で。
一応、地域の昔からの名主なそこそこ金満家の本家だから、葬儀自体は、何度も経験ありだし、
近い記憶では、小学校低学年で、曾祖母を送ってる。
静さんが永眠してしまったのは、日付が変わる頃の時間で。
それから、葬儀の支度を始める葬儀社の面子が呼ばれ、親父も残ってサポートしてくれてる。
これから、繁多な手続きや、支度があって、大変だろうと。
心ここにあらずな、健を横目に、俺が頑張らないとと、両手で頬を叩き気合を入れた。
里中医師と看護師さんと、葬儀社の人々で、静さんだった身体は、儀式の為のモノとなり。
「祭壇のしつらえやら何やらが整うまで、健くんを休ませて来い」
俺達は、静さんの部屋を出て廊下を挟んで向かいの、
健と付き合える前によく泊めてもらった6畳の客間に移動し、健の分だけ夜具を並べる。
葬儀場は、健の部屋のある、中庭に面した襖を外せばだだっ広い大広間になる客間。
寝間着やらのちょっとした荷物は、俺達のいるこの部屋に、すでに移動してあって、
本来の健の部屋であるその部屋には行かずとも済むように支度が済んでいる。
なんだか、こんなことの用意周到さが気に掛り。
念のために、いつもバックに準備してる安定剤を、飲み物に紛れさせ、健に与えて眠らせると
すぐに、葬儀会場へ向かった。
「なんだ、来たのか。大丈夫か?」
親父が、里中医師達をちょうど見送りに出ていて、向かう前に玄関で会う。
里中医師は、俺の肩を掴み
「健くんを助けてあげるというより、君が主体になってやるしかないね。頑張って」
励ましの言葉を置いて帰って行った。
そのまま、なぜか親父は玄関にいるから、俺も残っていると。
「待たせたな~。よろしゅう頼むの~」
入れ替わりに、よく、庭仕事で、佐倉家に来ている植木屋の爺さんが、礼服スーツで立っていた。
「葬儀委員長の、植松辰三さんだ。お世話になる方だから、きちんと挨拶しなさい」
「なんて呼ぼうかの、健坊ちゃんは、坊ちゃんなんじゃが。紛らわしいよの」
「名前でいいんじゃないですか?もう、こいつも佐倉の人間でしょうから」
「じゃが、わしらには、まだ、中舟生の二番目のぼっちゃんって感じが抜けんのよ」
場にそぐわぬ、呵呵とした笑い声が、癇に障って。
小さなことにイラついてる俺を、内心恥じた。
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