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そん時は、よろしく。にしおりをはさみました!
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そん時は、よろしく。
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奏も同じことを考えてるのか、“そうだそうだ”と不満たらたらな顔を雪里に向けている。
それに怯むことなく、逆に不敵にニヤッと笑う雪里。
ヤバい。俺の身に何か良からぬことが起きる・・・
危険を察知し、逃げようと後ずさりする、が、後ろに並ぶ男性の足を踏んでしまう。
俺は男性に謝り、雪里を責めるために勢い良く前を向き直す。
しかし、誰もいない。
『隙ありっ!』
「っ!?」
雪里の楽しげな声と共に、俺の左手が後ろから上へ突き上げられる。
がっちりと雪里の手に繋がれて。
『何してるのさぁ!』
『何って、手ぇ繋いでるの、律と。』
さっきのお返しなのか、雪里は奏と同じように俺と繋いだ手を前へ突き出す。
更に不機嫌になって雪里を睨む奏に、当の本人は余裕のある笑みを浮かべる。
さっきの拗ねたような顔はどこ行ったんだよっ!
“おいっ”と若干声を荒げると、“だってさぁ~”とまた口を尖らせる。
『だってさぁ~、羨ましいじゃん?律と手ぇ繋ぐなんて。
でもさぁ~、ほぼオレの我が儘じゃん?ここ来たの。』
「“ほぼ”じゃない、完全にだ。」
最終的に、行くと決断付けたのは俺だから、本当は雪里の言う通り“ほぼ”なのだが、イライラのぶつけどころにと、“完全に”と強調した。
しかし、普段から俺に嫌味を言われ慣れているからなのか、そんなことどこ吹く風で、雪里は喋り続ける。
『だからさぁ~、人混みで弱った奏チャンを責めるわけにはいかないじゃん?
ほぼほぼオレのせいじゃ~ん?』
『・・・そうだね。9割はアンタのせいだね。』
『でしょ?だから2人の手を無理矢理解くのは無いじゃん?流石に。
でもさぁ~、や~っぱイラッと来るんだよねぇ~』
“だからこうしたの”と、また俺の左手が挙げられる。
奏がボソッと、でも嫌そうに、“それなら仕方ない、か”と呟く。
それに安心したのか、更にニヤッとする雪里。
俺はすべてを把握した。
あれだ、“おあいこ”ってやつだ。
俺を中心にし、右手を奏、左手を雪里が握ることで、二人とも同じ立場になり、二人とも嬉しく楽しくなる、と。
分かる。その理屈は分かる。
が。
「これは俺が圧倒的に不利だっ!」
どこにいい年こいて両手繋がれて嬉しがる高校生が居るんだよっ!
しかも男にっ!
いや、奏は女の子に見えるかもしれないが・・・
いや、だったら並び順間違ってんだろっ!
つーか、大体これは奏を励ますためにやってんであって、俺がやりたいからじゃねェーんだってっ!
繋ぐなら俺の手じゃなく奏の手にしろよっ!
『何さ、その顔。
言っとくけど、律が奏チャンばっか贔屓するからだからね?
いつもの積もり積もった鬱憤を晴らしてるだけだかんね?』
・・・どうやら面倒臭ェスイッチが入ったらしい。
俺は“おてて繋いで仲良しこよし”状態を大勢に見られている恥ずかしさと、こうなることをもっと早く察知すべきだったという自己嫌悪に似た諦めを胸に、雪里に向かって言い放った。
「あとで覚えてろよ・・・?」
始まって間もないが、きっと今年で1番であろう、ドスの利いた声で。
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