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悪いかよ。にしおりをはさみました!
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悪いかよ。
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奏が俺の名を呼びながら、湯呑みを手渡してくれる。
俺は"ありがとな"と、今度はちゃんと受け取る。
"それでよろしい"
とでも言いたげに腕を組む親父の頭にぶっかけてやろうかと、
手元のお茶を眺める。
思いとどまったが。
奏の厚意を無駄にはしたくないし、
食べ物を粗末にするわけにはいかないから。
それに、クソ親父に構ってやる時間など、無い。
俺はお茶を一口飲んでから、
面倒臭いがもう一度親父に問いかけた。
「で、何しに来たんだよ?」
『"来た"じゃなくて、"帰ってきた"んだ!』
子供のような揚げ足取りをする親父に、俺は心の底から溜息をついた。
面倒臭ェ・・・。
このガキ、なんで帰ってきやがったんだよ・・・。
脱力しきった俺を、奏が体を使って支えてくれる。
雪里が悔しげに俺を見つめるのを軽く無視し、
"悪ィ"と奏に謝り、体勢を整えた。
「なんで"帰ってきた"んだ?」
わざとらしく強調して発音したが、
当の本人は全く気付くことなく、
ケロりと答える。
『日本人なら、やっぱりお正月、
迎えたかったから。』
"ほぉ"と俺は返事をした。
呆れを含めて。
親父の隣で、"里帰りですね!"とワクワクし出す。
里帰りねぇ?・・・
俺は隣に座る奏に耳打ちしてみる。
「親父から連絡、あったか?」
『なかったよ・・・?』
"気づかなかっただけかな?"と不安そうに俯く奏に、"大丈夫だ"と返す。
いくら最近奏が忙しいからって、
親父からの連絡に気付かないわけがない。
電話は相手が出るまで掛け続ける奴だし、留守電もガンガンする奴だ。
うるさ過ぎるほど。
手紙でだったら尚更だ。
奏がポストを確認しない日なんてないし、俺だって登下校時に覗いてる。
これはもう。
「連絡くらい入れろよな。」
『いや・・・
驚かせようと思って・・・。』
照れたように頭を掻く親父。
俺はその額に向かって、指で輪ゴムを飛ばす。
"いっ!"と短く叫び、額を手で覆う親父と、うずくまった親父に二次災害的に頭突きされる雪里を、
俺は冷ややかに見つめた。
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