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悪いかよ。にしおりをはさみました!
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悪いかよ。
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ギギギギギ、と親父は首を俺に向ける。
そして、親指を立て、開き直った声をあげた。
『"三ヶ日を我が家で過ごしてきます"って言ってきたから、大丈夫っ!』
キリッとした顔が、無性にムカつく。
"あのなぁ"とイライラと呆れを含ませて呟くと、雪里が"日本語的にはアリだね"と感心したように頷く。
いや、日本語的とかそういう問題じゃないから。
親父は何のために海外出張してんだよ?
仕事のためだろ。
仕事ほったらかして、炬燵で蜜柑食べるつもりかよ?
雑煮食べんのかよ?
同僚に申し訳ないとか思わないのかよ?
多分、交代で休暇取ってんだろうから、親父が期日通りに帰らないと困る奴、絶対居るんだよ。
バカか?
自己中か?この糞は。
俺の顔面から滲み出る不満を察知したのか、親父はケータイ片手に慌ててソファから立ち上がる。
"電話、してくる"と、そそくさとリビングを出て行く後ろ姿を、
俺は"もう帰って来るな"と一瞥した。
パタンとドアが閉まると同時に、俺の体から力が抜ける。
あのバカ親父とは、生まれた時からの付き合いだが、未だに扱いが分からない。
つーか、面倒臭い。
ふぅー、と溜息をつきながら、奏をチラ見する。
もう親父はリビングから出て行ったというのに、ずっとドアを見つめていた。
あんま構ってやれなかったな・・・
一応、親父とは初対面なんだし、俺の父親ってこともあるし、気ィ遣ったよな・・・
もう少し上手く会話に混ぜてやればよかった、と後悔しながら、
俺は向こうを向いたままの背中に、名前を呼びかける。
"ごめんな"と言おうと開けた口を、奏のワクワクしたような笑顔が閉じさせる。
『りっちゃんのお父さん、
可愛い人だね!』
「はぁ?」
"どこが?"
その言葉は、雪里の大声によって掻き消される。
『だよなっ!
聖也さん、くっそ可愛いんだよ?』
『長谷川さんが言うと、なんか一気に可愛くなく感じそうだけど、
でも、なんか可愛いっ!』
毒を吐くことを忘れないが、
それでも2人で"可愛い"と連呼しまくる。
いや、アレのどこに可愛い要素、在るんだよ?
確かに、実年齢よりは若く見えるし、加齢臭もしないし、毛もフサフサだが・・・
「・・・分からない。」
俺の呟きに、2人が同時に
"えぇ?"と、不満の声をあげる。
自分の父親だからだろうか?
全く可愛さが分からない。
つーか、むしろ癇に障るというか、
癪というか、イライラするというか。
"連絡先、登録し忘れてた"
そう肩を落としながらソファにダイブしてくるこの廃れたおっさんを、
俺は"可愛い"などとは到底感じられないのだが。
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