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練習の日々 10にしおりをはさみました!
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練習の日々 10
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それからしばらく歩く練習をして、何日か経った頃。
暇つぶしもかねて部屋の中を歩き回っていると、ガチャリと扉の開く音がして、俺はできるだけ急いでそちらへと向かう。
「なんだ、出迎えか? お前も暇だな」
ルーシャが手に何やら大きな袋を抱えて入ってきた所だった。
額には汗が浮き出ている。
外が暑かったのだろう。
最近段々と気温が上がってきたのか、暑い日が増えてきた気がする。
こんな時は思い切り海にでも飛び込みたい気分だ。
もちろん無理な話だが。
ルーシャの目に入ってしまいそうな汗を、袖で拭いてやろうと手を伸ばす。
「うわっ。何だよ、急に」
「汗が出ていたから。ちょっとじっとしていてくれ」
そう言ってから顔の汗を拭いていく。
眉間にしわを寄せて、目を閉じてされるがままになっているのは両手がふさがっているからだろう。
「お前なぁ、もうちょっと丁寧に拭けよ……」
不満げにぼそりと言うと「で? 何で玄関まで来たんだ?」と尋ねてくる。
「ルーシャが出て行ってから全然帰ってこないから……少し心配していた」
「あー……それは悪かったな。ちょっと長引いて」
申し訳なさそうに言って視線をさまよわせる。
「ルーシャがいないとつまらない」
今日は朝から出かけていて、早く帰ると言っていたのにもう日が落ちそうな時間だ。
家の中だけではすることがない。
話し相手も居ないし。
「そ、そうか……。あ! それより甘いもの買ってきてやったから一緒に食べようぜ」
少し顔が赤いルーシャが抱えていた袋をほら、と少し持ち上げる。
甘いもの……。
そう言えばなんとなく甘い香りが漂ってくる。
「楽しみだ」
「お前ってほんと甘いもの好きだな」
呆れたように笑うルーシャの後を追っていく。
移動して、ふとルーシャの顔を見るといつもよりほんのりと赤いような気がする。
まだ明かりをつけていないし、夕日のせいか?
少しじっと見すぎていたのか、ルーシャが不思議そうに見返してくる。
「何だ? お菓子ならすぐだしてやるから」
どれだけ食い意地が張っていると思われているのか少し気になったが、それよりも気になっていることを聞いてみる。
「顔が赤い気がするが、大丈夫か?」
「顔? あー、そう言えばこの部屋なんとなく暑いな。そのせいか?」
そう言って手でぱたぱたと顔を扇ぐ。
手を伸ばしてルーシャの頬に触れてみると、「おー、冷たくて気持ちいいな」と、目を細める。
おかしい。
いつもなら驚いているはずだ。
そのまま目を閉じてしまいそうな様子に、もしかして体調が悪いのかと思い、とりあえずいつも俺が寝ている寝台へと促す。
「あー、なんか頭が痛いかも」
座るなりそう言うと、そのまま寝転がってしまう。
いつもと違う元気の無い声に急に心配になった。
「ルーシャ? 大丈夫か?」
顔を控えめにぱちぱちと叩くと、うっすらと目を開けて「冷たい手って気持ちいいよな」と、手を握り頬へと移動させた。
先程より顔が赤い気がする。
どうしようかと思ってルーシャに声をかけるが、目を開ける気配がない。
寝てしまったのだろうか?
どうしたらいいのか。
水でも飲ませた方が良いのか。
視線をさ迷わせて、ますは水を持ってこようと思い、立ち上がろうとすると手を引っ張られる感覚があった。
そうだ、ルーシャに手を握られていたんだった。
ルーシャを見ると、ぱちりと目があった。
さっきまで眠っているようだったのに。
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