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この手に残った温もりは 那雪sideにしおりをはさみました!
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この手に残った温もりは 那雪side
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「…那雪ッ…テメェ…ッ…!」
葉佑が、俺の胸ぐらを掴む。
ICUの赤い光はまだ消えない…俺は、何も出来ない。
「…ッ……」
「何で…何で桜がこんな目に逢うんだよッ…!!アイツは…アイツは…ッ…」
アイツは、幸せに生きたかったはずなのに。
葉佑の瞳から涙が溢れていく。
胸ぐらを掴む腕が震えて、その場に葉佑は崩れ落ちる。
「アイツ…お前が来る前に…殺してくれって…
何度も犯されて…泣きながらッ…泣きながら言ってたんだよ」
「なんで…アイツを幸せにするんじゃねーのかよ…
なんで桜の父ちゃんが桜を撃つんだよ…なんで桜が傷付くんだよッ…!!」
床に振り落とされた腕は悲しい音を奏で静かな病院内に響いていく。
紅佑は静かに泣きながら葉佑を引き上げて、俺を見た。
「桜にもしもの事があったら、俺は絶対に許さない…」
低い声で、ただ一言。
紅佑に支えられながら、双子の兄弟は去っていく。
呼び止める事も、謝罪することも出来ずに…ただ、立ち尽くすだけ。
「…クソッ…ッ…!!」
赤蜘蛛の幹部である蔵根が倒れた今、狼月会の組は赤蜘蛛殲滅に勤しんでいる。
あの組が潰れるのも、時間の問題だろう。
若頭・志藤 那雪としての仕事は果たした…けれども、桜の恋人としては何も出来ない。
そんな自分が憎かった。
「桜…ッ…」
廊下には誰も居ない。
ずるずると床に座り込んで、涙を流した。
「……俺の…せいだ…ッ…」
蔵根は、アネモネを殺した俺を許せなかったから…
こんな悲しい復習劇が始まった。
「どうして桜なんだよ…アイツは…ッ…こんな薄汚れた世界には居なくて良いのに」
アネモネの子供だろうが、桜自身に罪なんて無いのに。
自ら殺してと言うほどに…心も、身体も…限界まで壊されて。
それでも俺を守ろうとした…愛おしい恋人。
ICUの赤い光が消えて、中から医者が出てくる。
「アキッ…!!桜は、桜は大丈夫なのか…ッ…!!?」
アキ、と呼ばれた女性は、
俺達のような…一般的な病院に行けないヤクザ達を請け負っている町医者だ。
腕も確かで、何度も命を救われてきた。
「あぁ、出血が酷かったが、一命は取り留めた。
だが…衰弱が酷い上に恐らく感染症も併発している…中々に危ない状態だな」
グサリと刺さる言葉。
もう俺には、桜の無事を願う事しか出来なかった。
*****
あの日から1ヶ月。
ーーー…桜は、まだ目を覚まさない。
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