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この手に残った温もりは④ 那雪sideにしおりをはさみました!
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この手に残った温もりは④ 那雪side
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「………桜、いつになったら目ぇ覚ますんだよ…?」
今日で、桜が倒れてから一ヶ月が立った。
傷口はもう殆ど塞がっており、いつ目覚めてもおかしくないのに。
「なぁ、桜…もう初夏だぜ?………ッ…
夏休みになったら、お祭り行ってかき氷食おうな…?
桜の大好きないちご練乳味でさ…それから、」
眠り続ける桜に、俺の言葉が届かないのは分かっていた。
けれど、俺はこうやって毎日毎日桜に語り続け、手を握った。
この先…ずっと桜が起きないかもしれないという、
恐怖と戦いながら。
「射的の腕には自信があるんだぜ?俺。だからさ、勝負しよう、ぜ…ッ…?
最後、は、花火見て……ッ…さく、ら…桜…ッ…」
耐えなくたゃいけないのに…言葉は嗚咽に変わり、涙が溢れる。
「桜…お願いだから…俺を一人にしないでくれ…ッ…」
苦しくて。
また、あの時の孤独を味わうのだと…そう思うと身体が震える。
「……ッ…桜…早く目ぇ…覚めろ、よ…なぁ…ッ…」
すがり付くように手のひらを握っていると、ピクリ…と指が動いた。
「さ、く…ら…?」
声を震わせながら、呼び掛ける。
桜は、ゆっくりと瞼を開けて…青い硝子のような瞳が俺を写した。
「…、……、…」
ゆっくりと、口許は“那雪”と口ずさんでいるのに。
それは音にならずに消えて。
「ーーーー……え…?桜、どうして…」
桜の唇からは、乾いた呼吸音しか聞こえなかった。
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