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この手に残った温もりは③ 葉佑・紅佑side
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「……ッ…紅佑、俺…最低だよな…」
紅佑に腕を引かれながら歩いて、葉佑はポツリ…と言葉を溢した。
ピクリと微かに紅佑の身体が震える。
「俺、また何も出来なかった…ッ…
なのに、必死に桜を助けようとしたアイツに馬鹿みたいにキレてさ…ッ!
どうしようもなくて…何も出来ない自分が腹立つんだよ…」
「那雪が命をかけてまで桜を守ろうとしたように…
桜も、那雪を守ったんだ…なのに…ッ…俺、俺ッ……最低だよな…ッ…!!」
紅佑の腕を振り払い、涙を溢しながら葉佑は吐き出すように言葉を紡いだ。
何も出来なかった、無力な自分自身を叱咤するように。
「葉兄…最低なのは俺の方だ」
葉佑に聞こえない位の小さな声で、葉兄が好きだから、と呟く。
桜が集団恥辱された時、桜の言葉に安堵した自分がいた。
葉兄が汚されないと。
目の前で壊されていく、誰よりも幸せを望んでいた友人を、見捨てたのだから。
汚れて、最低なヤツは俺自身だ。
唇を噛み締め、葉佑の肩に頭を乗せる。
きっと桜は…自ら殺してと懇願するほどの痛みに耐えて、泣きながら、一人で…
俺達を必死になって守ろうとしたんだ。
自らを犠牲にしても俺達を守ろうとした、優しい弟のような桜に、
俺達は何が出来るのだろうか…
「葉兄、今は桜の手術が成功することを祈ろう…」
それしか、今の俺達には出来ないから。
桜が目覚めたら、辛かった今までの分を幸せで埋めてあげるために。
だから、今は…笑顔でいよう。
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