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本音(龍之介side)にしおりをはさみました!
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本音(龍之介side)
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ライフルから手を離して振り返れば、声と同じく、ひどく静かな瞳とぶつかった。
途中で感じたあの気配が士郎だったのだとしたら、もうずいぶんと長いこと見られていたことになる。
まともに銃をいじったことのない士郎にも、次々と動く的を射る自分の腕が生半可なものではないことくらい、容易に察せられたろう。
驚愕と畏怖、拒絶、罵倒。
覚悟していたマイナス感情のどれ一つとして読み取れない、不思議なほど穏やかな瞳に戸惑った。
「……怖くねェのかよ……?」
「驚いたのは確かだが、怖くはないな」
「……単なるガンマニアじゃねェぞ? 法の闇に紛れて捕まンねェだけで、この手は血に塗れてる。もう……何人殺したかも覚えてねェ」
これ以上話すなと理性が告げるのに、ダメだった。
「それをどっかで楽しんでる。この世界でしか生きらんねェ……それがオレだ」
睨みつけるようにして投げた視線だが、平然と受け止められ、行き場を失った。
「……おまえは何のために戦ってる?」
月明かりに照らされた、凪いだ日の湖面のような瞳。
深く澄んだ色をたたえ、凛とした静けさに満ちている。
受け入れられることで、安らかに満ち足りていく心が怖かった。
「ガキを……助けるために。……けど、そんなのはしょせん言い訳に過ぎねェ」
ギリギリの戦いの中でしか生きられない。
「オマエとは、住む世界が違う」
「……そうだな。どう転んでも、オレに人は殺せない」
受け入れられることと、共に生きることは違う。
わかっているのに、思わず士郎の胸元をつかんでいた。
ギリギリと力を込めると、
「……よせ、怪我をしてるんだろう」
気遣われ、笑った。
「……痛くねェよ。こんなン全然、痛くねェ」
痛むのはもっと、別の場所だ。
吐息が触れそうな距離で、見つめ合う。
薄い一重まぶたの下の切れ長の瞳に、苦しげに表情を歪ませた己の姿が映っていた。
……この男と離れて生きていく?
そんな未来は考えたくもない。
数えるほど肌を合わせただけなのに、永遠を思うほどそばにいた気がするのはなぜなのか。
どうしても離れたくない。
共に来いと言ってしまいたい。
口を開きかけた瞬間、壁際に抑えこまれた。
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