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邪心にしおりをはさみました!
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邪心
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「…これは、どういうことなんだろうね? 七生?」
明らかに悪意のこもった言い方で社長の当夜が佐伯に問う。佐伯は内心舌打ちをしながらも、いつもと変わらない顔でその動揺を隠した。
「どうと、言われましてもね…」
「お前のお気に入りの子だ」
「これは違いますよ」
「そうだね、マモンだ。人間じゃない」
「ちょっと待って。お気に入りって? 貴方、新入社員に手を出したの?」
長女の一実が会話に割って入った。その話は兄弟には話していないから初耳だろう。他の兄弟も驚いた風に佐伯に視線を投げた。佐伯は別に真白の事を隠しておくつもりもなかったので正直に兄弟と祖父に真白との関係を話した。一実は頭を抱える。別に反対する気はない。恋愛は自由だ。だが一回り以上も歳の違う新入社員に手を出すなんて…と少し呆れた風に佐伯に視線を寄こした。
「…貴方ね…こんな若い子を…」
「いや〜いいじゃない。羨ましい!いいなぁ〜七生〜」
「六彌は馬鹿な事を言ってないで、少し黙ってなさいよ」
「ねーちゃん、こっわ…」
六彌は七生と年齢が近いので、親友の様な兄弟関係だった。心底七生が羨ましそうに見ている。佐伯は別に年齢とか性別とかそういうのを越えて真白を愛しているだけだ。若い恋人っていうので羨ましがられても困るのだが。
「…その話は後でじっくり聞くとして…で、煌八。この人型マモンはまだ建設中のモジュールに?」
「いや、今のところ、この日録画されたこれだけだ。翌日保安部と国家マモン対策室で捜索に当たったけれどね…見当たらなかった。」
「七生、工事は行えそう?」
「工事は通常通りに進めるよ。ただ、このマモンがいなくなったという確かな証拠がない限りは、警備を強化して工事に入ることになるね」
「分かりました。で、この人型マモンに関して国の動向はどう?」
「国家マモン対策室、動いているのは確かだね。昨日、水上に接触してきたよ…」
「そう…」
「問題になる前に、しっかり水上くんに聞いた方がいいのではないか? 七生」
社長が嫌味な顔をして、佐伯に言う。ただマモンが真白の顔を持っているからと言う訳ではない。とにかく真白と佐伯が一緒に居るのが気に入らないだけだった。これを問題にしたがっているのは社長だ。佐伯はニッコリと微笑み口を開こうとしたその時。
「まあ、それはええよ。特にこの事について、国対から水上くんは何も聞かれてないんだろう?」
今まで黙っていた会長が口を開いた。ふさふさの髭をふわふわ揺らしながら佐伯を見ていた。佐伯は社長に向いていた視線を会長に移し、頷いた。
「むしろ、ヘッドハンティングされたらしいですよ」
「はっはっはっは! そうか、優秀な人材はどこでも引っ張りだこだ。しっかり捕まえておけよ、七生」
「はい。もちろんです」
「工事は安全第一に。社員はもちろん、下請けの人間も含めてだ。いいね、当夜」
「……かしこまりました。会長」
「うん。この件は私に逐次報告を。一実、頼んだよ?」
「はい、仰せつかりました。会長」
「うん。で、七生」
「はい」
「今度、私の家に水上くんを連れてきなさい。十子(とうこ)と母さんにも紹介したい」
「…はい。ぜひ」
その言葉に社長の当夜は会長を凝視した。十子は当夜の妻で佐伯達の母親だった。ただ最近体調がすぐれなく、実家で養生していた。当夜は婿入りだった。そのせいか、会長の廉太郎には頭が上がらない。しかし、真白に本家の敷居を跨がせ、自分の妻とその母親に紹介するということは、二人の関係を認める事になる。
「…会長、何をおっしゃっているんですか?」
「そういう意味だ。いいな当夜」
「…はい」
「では、私はこれで失礼するよ。次の予定が迫っておる」
皆、去っていく会長の背に一礼する。下を向きながら、社長の当夜は怒りに震えそうな体に更に力を込めた。汚い血が、入ってくる…そう考えると虫唾が走った。
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