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神の名にしおりをはさみました!
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神の名
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真白が瞼を閉じる。その瞼に佐伯はそっとキスを落とすと、真白は安心したように溜息を吐き眠りに落ちていった。
しばらく眠りに付く真白を眺めていた佐伯はそっと、自分の腕にあるブレスレット端末を立ち上げる。疑似画面を瞳の移動で操作できるように設定した。これで、あまり腕を動かさなくても操作できるので、真白を起こす事はないだろう。
佐伯の呼び出したデータは社内でも極秘中の極秘資料だ。最近、妙な宗教団体が活動を活発化しているという報告だ。
その新興宗教はマモンを神として崇めているということで、公安とマモン対策室が内密に動いていた。佐伯の会社の監察部がその動きを察知し、こちらも内密に動いていたのだった。佐伯の会社にも少なからず影響が出るだろうと佐伯は見ている。マモンを神と崇めるなら、それを追い出すような事をする線引き屋は敵対する相手になる。マモン対策を行っている建設中の都市は日本全国にある。それらが、その新興宗教の攻撃に晒されては問題だ。早めに手を打つのも佐伯の仕事だった。そして、なにより気になったのは、真白にしがみついて、真白に向かって男が叫んだ言葉だ。
『プラーヴァシ』
それは、その新興宗教の崇める神の名だ。
佐伯は眉間に皺を寄せ、自分にくっついて眠る愛しい人を更に抱き寄せる。すると無意識に真白は体を佐伯に寄せた。だが嫌な夢でも見始めているのだろうか…真白は少し眉間に皺を寄せ始めて佐伯の服を掴んでいた。
大丈夫、大丈夫。佐伯は真白の額に唇を寄せ頭を撫で、心でそう言い聞かせる。それが聞えたように真白の眉間の皺はなくなり、また穏やかに眠り始めた。
「あれ? ギプスしてなの?」
「ヒビなので、しないですよ。ガッチリサポーターで固定されて、あんまり動かせないですけど…」
「骨折って聞いたからさ」
「すみません、ご心配おかけしました」
「しかし、災難だったな…」
午前中、病院に行って午後出勤した真白を皆、心配そうに迎えた。狂った男に強く掴まれた足首はヒビが入っていた。もう片方は圧迫で出来た痣に湿布を貼っている。腫れはだいぶ引いたが、やはり歩くとズキズキと痛んだ。前島部長は、しばらく現地調査から真白を外すことにして、内勤で線引きをみっちりやってもらう事にした。山村はギプスだったら、落書き出来たのにね、と笑いながら言っていた。前島弟も伊藤も、落書きする気でいたので、真白はギプスじゃなくて良かった…と苦笑いをした。
「…それで、前島部長。申し訳ないのですが…」
「ああ、聞いてる。聴取を受けるんだろ? やっこさん達、こっちに来るって連絡があった」
「すみません、ご同席願えますか?」
「そのつもりだ。佐伯も同席するって。あ、知ってるか」
前島はニヤニヤと真白を見た。真白は眉を寄せた。当然、佐伯が同席するのは知っている。病院に一緒に来てくれて、車で会社まで連れてきてくれたのだ。その間に鮫島から連絡が入ったのだから。真白は誰に見られるか分からないから、病院は一人で行くと言ったのだが、佐伯は一緒に行くと言って頑として譲らなかった。一昨日の事件からずっと佐伯は真白に付きっきりで、尽くしていた。それに真白は申し訳なく思っている。いくらなんでもこれでは、佐伯が疲れてしまうのでは…と心配もしていた。佐伯はいつもの様に微笑んで、大丈夫だよ。と言い、そして人の心配してる場合か?と言う。このぐらいの怪我なら、すぐに治るのに…佐伯は真白に対してかなり過保護になった気がした。
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