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8月25日の休憩にしおりをはさみました!
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8月25日の休憩
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物流センターの建て替え完了は1年後。
手はじめに他地域にある新しいセンターを見学するため、俺はあさって木曜日に出張で香川県へ行くことになった。
「え、春日さんも?明後日の香川行き、調整できたんですか」
「まとめて行ったほうがあっちも都合がいいだろうから、なんとかね。あとは広島からも1人行くよ」
自販機前でコーヒーを飲んでいた時だった。
下のフロアで仕事をしているはずの春日さんが、わざわざ俺を探しに来たんだ。
「いわるゆる接待はお断りしたんだけど、香川支社の高橋さんと広島支社の沖瀬さんで、酒のうまい店に行こうって話になったんだ。橘くんもどう?」
「マジすか。そりゃもちろん、ご一緒させてください」
いつもなら面倒くさいと思わなくもないが、春日さん
が誘うと妙に魅力的に感じる。
「じゃ、予約してもらっておくよ」
「よろしくお願いします」
本当にそれだけの用事だったらしく、春日さんは手を振ると、さっそくスマホを耳にあてながら帰っていった。
本当にマメだな、春日さん。
人懐っこいようで、あっさりしてるし。
窪田もあんな人が上司なら、ちゃんとやっていけそうだな。
時々、顔色が悪かったり胃が痛いと言ってたのが気にはなるけれど。
春日さんの背中が通路の角を曲がって消えていくまで眺めていると、不意に背後から声をかけられた。
「春日さんと仕事するんですか」
「んっ?…おお、びっくりした!」
振り返ると、山田が立っていた。
「お疲れ。お前も休憩?」
「一応、橘さんを探しに来たんですよ。実はさっき、袴田さんから電話があって…」
建て替えの計画が決定してから、今まで俺と2人で対応していた仕事を山田が一人で請け負うことになったので、たびたび山田が俺から引き継いだぶんの確認を求めることがあった。
「…なるほどな。あの人、独断で言ってるだけだから業者さんの方に確認とったらいいよ」
「やっぱり、ですよね?橘さんが言うならそうしちゃいます」
「昔っからあんな感じらしいから、イチャモンつけられても気にすんな」
「すっごいストレスなんですけど」
俺と山田には手を焼く社員がいて。
先輩だからキツくは言えないけれど、どうしても軋轢が生じる。
「春日さんみたいな人なら上手く立ち回るんだろうなぁ。俺たちには真似しきらないけど」
ふと思ったことを、そのまま口にしていた。
すると山田がギョッとした。
「え、もしかして橘さんも春日マジックにかかってるんですか?」
「んぁ?なんだそりゃ」
「俺も詳しくは知らないですけど、そういうのがあるみたいですよ。魔性の男、とか呼ばれたり」
「あまり穏やかじゃないな」
俺が眉をしかめると、山田は困ったように笑った。
「同期の営業が言ってたんで、どういう意味か聞いておきますよ。橘さんて、ホント変わった人と関わっちゃいますからね」
「……それを言ったら、お前も…」
「うわぁ、最悪ですね。オレ、本当は橘さんと喋りたくないです」
ツッコミを入れたつもりが、山田に憎まれ口で返された。
山田、お前も冗談抜きでちょっと変わってるぞ?
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