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写真と真実にしおりをはさみました!
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写真と真実
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「まだ…好きなの?」
アイロンのかかった白いハンカチを差し出しながら、僕の目をじっと見つめてくる。
彼女の顔がぼやけて、彼と重なって。
胸はさらにキュウッと締め付けられる。
視線を外して壁にかかる振り子時計を見た。
時刻は15時を回っていた。
「…嫌いになれたら、いいのにな」
口から零れたのは思ってもいない言葉。
嫌いになんてなれない。なりたくない。
だけど口先だけでいい。
強がりを言わせて。
受け取ったハンカチで溢れる液体を拭った。
「そっか…」
それ以上、彼女は何も言わなかった。
**
鳴り響く雷鳴。
窓ガラスにあたる大粒の雨。
そういえば、夕方から天気悪くなるんだっけ。
「佐伯さん、傘とかある?」
急に話しかけられて少し驚く。
あの後、僕たちの間に会話はなかった。
でも不思議と苦じゃなかった。
それはお互い、考えてもどうしようもないことを考えていたからだろう。
「いや…」
彼女の顔は直視できなかった。
どうしても彼と重なってしまう。
化粧をしていても、パーツは彼そっくりなのだ。
「じゃあ、…飲みません?」
どうやらここはカフェバーらしい。
夜に来たことはなかったので、僕はずっとカフェだと思い込んでいたのだ。
「…あぁ」
丁度、いいかもしれない。
酔って、全部忘れてしまいたい。
そうすればきっと、楽になれる。
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