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帰り道にしおりをはさみました!
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帰り道
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「マキノっち最近部屋に帰って来ないよね」
帰り道、一駅だったので、一緒に歩くことになった。
俺の歩幅に合わせてくれる宿人先輩。
「俺今家出中なんですよ」
ぽつり、と呟く。
「カガリくんと喧嘩しちゃった?」
彼は俺の横で、そっと言葉をかえした。
図星だった。
彼は俺の表情から気持ちを読むのが早い。
それに何度助けて貰ったことか。
宿人先輩は俺の部屋の隣に住んでいる。
今は天野さんに家に居候の身であるが。
だから宿人先輩はカガリとも面識がある。
東京に引っ越してきたばかりの頃は、よく彼に面倒を見てもらっていた。
前は俺らの部屋で一緒に晩飯も食べてたっけ。
彼が仕事が忙しくなると、それが3日に1度になって、1週間に1度になって、一か月に1度になって。終いには、めっきりマンションで会うこともなくなったが。
そういえば、今のバイトを紹介してくれたのも宿人先輩だった。
「ちゃんと仲直りしとけよ。でないと取り返しのつかないことになるからさ」
方向性の違い。解決なんて出来るのだろうか。
昔は夢に向かって何も疑問も持たずに、走っていた。
だけど、今は違う。
夢を追いかけてれば、万人がそれを叶えることが出来る訳じゃない。
しかもこの業界は特にタチが悪い。
俺だってそんなこと分かってる。
でも、一番側にいたカガリには諦めて欲しくなかった。
あいつはいつだって、俺の目標だったから。
ただ、気になったことは。
宿人先輩は俺の目を見ながら、自分自身に対して言い聞かせているように見えたこと。
「んで、今はどこに住んでんの?」
答えていいのか一瞬迷った。
「今は……天野さんの家に居候してます」
そこで納得したようにぱっと目を見開く彼。
「だからお前、天野さんと仲良いんだな」
確かに。一緒に仕事をするようになって気付いた。
あの人は、馴れ合いなんかで無理に人と付き合おうとはしないこと。
自分の時間を大切にしている。
人と距離をワザと置いてるみたいな。
だけど、俺は知ってる。
ホントはみんなで一緒に笑うことも好きなこと。
インディゴで、俺のパーティーを開いて貰った晩、寝顔が無邪気な子供に戻ったみたいだった。
「じゃ先輩お疲れさまです!」
信号を渡ったところで、先輩と別れた。
「気をつけて帰れな〜!」
先輩が夜の街へ消えていく。
俺はそれを見届けて、天野さんのいる家へと帰った。
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