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雨とため息にしおりをはさみました!
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雨とため息
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遠くで、昼休みの終わりを知らせるチャイムが聞こえた。
あと5分で次の授業が始まる。
「あ、もうそんなに時間たってたんだね」
多宮さんが慌てて立ち上がる。
話に夢中になって、昼休みだったということを忘れていた。
「私は教室に戻るけど……」
「あぁ俺は……まだここにいるよ」
今更教室に行くのも、彼に会うのも気まずいし。
「そっか…。その、あんまり思いつめないでね。辛かったら、いつでも相談に乗るから」
「…うん、ありがとう多宮さん」
それじゃあ、と校舎に戻っていった多宮さんを見送り、俺は空を見上げた。
と、同時に、鼻先にぽつりと水が落ちてきた。
「あ、雨……」
俺の足にすりついていた仔猫を抱え、多宮さんが作ったと言っていた猫用の小さな家に入れてやる。
「今日はここから出るんじゃないぞ」
にゃーとかわいらしい声で鳴いた仔猫をひと撫でし、持っていたハンカチをかけてやる。
ほんの少しだろうけど、これで寒さも和らぐはず。
「じゃあまたね」
そうして俺はそのまま学校を出た。
今朝はぼーっとしていたから、いつも持ち歩いている折り畳み傘を家に忘れてきてしまった。
そのため必死になって今雨の中を走っているのだが、思いの外雨が強くなってきている。
それに普段体育以外で運動なんてしないから、俺の体力も限界に来ている。
いつも本を買っている本屋に辿り着いたところで足を止め、屋根のある所で雨宿り兼休憩をさせてもらうことにした。
「ふぅ……」
髪も制服も雨でびしょ濡れだ。
帰ったら母さんに怒られるなぁ。
制服の上着を脱ぐが、中のシャツにまで雨が浸透してしまっていた。
肌にシャツが張り付いて気持ち悪いが、仕方ない。
深くため息をつき、目の前の水溜まりをぼーっと眺めていた。
すると視界に誰かの足が入り込み、反射でその人を見上げてそして、一瞬からだが硬直してしまった。
そこに立っていたのは、大泉くんの元カノの五十嵐祥子さんだった。
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