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後悔。--功太side--にしおりをはさみました!
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後悔。--功太side--
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部屋に戻ったはいいが
本当にここはする事が無い
だからベッドに潜り込んで
只々時間が過ぎるのを待っている
1人になると色んなことを考えてしまい
勝手に1人で苦しくなる
蒼の事
理樹の事
自分の事
これからの事
いつまでこんな生活が続くんだろう
死ぬまで?
一生ここにいるなんて嫌だ
でもどうやって終わらせればいい?
誘拐された今でさえこの状況下に置かれた自分をまだよく飲み込めていない
そんな解決することの出来ない事ばっかり
考えてしまう
そしてなにも起こせない自分の無力さを
痛感してしまい
全てのやる気が無くなって
また当たり前のようにここにいる
そんな永遠ループ
「はぁ...」
そんなため息をついた時部屋のドアが開いた
(あれ、蒼は学校に行ったんじゃ...)
誰が入って来たんだろうと
視線だけを送ると入って来たのは
何を考えているか分からない男ーー
白井だった
あからさまな嫌な顔をしたことに
自分でも気づき咄嗟に顔を布団で隠す
少し様子を伺っていると
なにやら部屋の掃除をしている様だった
早く出ていってくれ、
そう思ってその場を過ごしていると
白井の気配が自分の近くに在る事に気づいた
布団から顔を出すと
白井がこちらを見据えながら立っていた
白井の目に見られるのは
とても気味が悪くて嫌いだった
「...何...」
「....貴方はもう身も心も蒼様の物ですね」
怯えながらも強気に口を開く功太へ
白井は表情を変えず呟いた
は?
功太はその言葉に唖然としながらも
怒りと呼べる感情が湧き上がってくるのがわかった
蒼の物?
そんなの嬉しくないーーーー。
腹が立つほどの嫌味を言われ
功太も白井へ言い返そうと思考を張り巡らせた
「...あんたは望んでも、あいつの物にはなれない」
こんなの本心じゃない。
ただこいつをギャフンと言わせたいだけ
こいつに対して優越感を味わいたいだけ
だが、白井は功太が想像していたよりも
驚いた顔を見せ動きを止めた
功太はそれに気づくと
白井を負かしたいと思う一心で
言葉を続けた
すぐに後悔するとも知らずにーーー。
「あんた、あいつの事好きなんだろ?でもあいつは俺の事が好き.....嬉しくないけど。.....あんたはあいつの物にはなれない」
わざと俺のことが好きと説明するが
やっぱりその事実があるからか心が苦しい
お前はあいつに片思いなんだよ、と
お前の好きな奴はお前に気なんてないんだ、と
得意げな顔を見せほくそ笑んだ
見たこともない位の
辛いというか...
驚きというか...
そんな顔をした白井を見た瞬間
望んでいた優越感を感じた
勝った。
そんな気持ちが心に満ちていた
だが次の瞬間だった
白井は手に持っていたシーツカバーを
布団の上に投げつけた
その不鮮明な音で身体が硬直する
功太はさっきの顔とは打って変わり
驚いた顔で白井を見る
目に映ったその顔は
いつもの冷淡な無表情なんかじゃない
ーーー怒りに満ちた表情だった。
白井は功太の居るベッドへ登りその上に跨った
そして
振り上げた拳を勢いよく振り下ろした
左頬に重くて鈍い痛みを感じた
「...っ、やめ...っ!」
急展開すぎてついていけない
白井がこんな感情的になるなんて、
暴力を振るってくるなんて、
考えもしなかった
与えられた痛みとまだ整理の追い付かない脳が
錯乱して功太は軽くパニックになった
腕で顔を覆いその隙間から白井の顔を覗く
睨みを利かせた目つきに
いつもの冷静な彼はいなかった
その目を見たとき
功太は初めて白井を怒らせたのだと気付いた
まずい。
でも謝るなんてできない
.....やりたくない。
どうすればいい?
怖い。謝りたくない。でも、でも....。
どうすればいいかわからず
ギュッと目を瞑った次の瞬間
喉を力強く絞められた
白井が喉を絞めて来たのだと気づくのに
時間は要さなかった
かはっ、と声が漏れ
躊躇なく緩急をつけずに力を加えるその手に
手を重ねる
苦し、い.....。
解こうと指を立て白井の手に爪を立てる
蒼とは違う絞首は
一切の加減はなく、確実に殺しにきているような
そんな感覚がした
...殺さ、れ...る...。
ここへ来てもう何度首を絞められただろうか
絶対になれるはずのない感覚は
功太を恐怖の底へ突き落とす
「...お..えに、何....る..っ!」
白井が鋭い剣幕で何かを言った気がした
耳鳴りのような音が頭に響き
視界が霞む
聞き取ることなんてできるわけなかった
「...あ”....っは...がっ....」
離して、と吐くこともできず
言葉にならない声でそれを請う
死にたくない
怖い。怖い。苦しい。怖い。苦しい。
もう無理だーーー。
そんな意識がし始めた瞬間
白井はパッと手を離した
力のなかった目が見開かれ
肺に一気に入り込んだ空気に蒸せ返った
げほっ、ごほっと乾いた咳をする功太を
白井は冷たい目で見ていた
「...やめ...っ、て...嫌、だ....」
息を整えながら呟くように
力無い声を出す
シーツをぎゅっと掴む手は弱々しい
身体の震えが止まらない。
また何かされるんじゃないかと
この先のことを考えると怖くて堪らなかった
「....カバーを取り替えます。退きなさい」
だが白井は
冷静さを取り戻しつつあるのか
いつものような口調で功太へ命じた
功太はまだ肩で息しながらだが
ベッドから足を下ろした
素早くシーツカバー類を取り替えると
交換したそれを片手に部屋を足早に出て行った
功太はまたベッドへ身を投げた
さっきまで絞められていた首へ手をかける
以前、蒼に噛まれた傷は
治癒してはいなかったが乾いており
痛みはあまり感じなくなっていた
あんなこと言うんじゃなかった。
俺はあいつには勝てるわけ、無いんだ...。
言い負かすなんてもうしない
改めて自分のしたことに後悔の念が湧いてくる
すると
一粒、ぽろっと涙が溢れた
自分の手の甲へそれが落ち
功太は驚いた
「...そっか。怖かったよな...っ、」
知らずに耐えていた涙が一粒落ちると
それはとめどなく溢れ頬を濡らした
功太は声を押し殺しながら
下唇を強く噛んだ
布団に包まり、自分を抱くように
身体を丸める
頬がまだ乾かぬうちに
功太は眠りの世界へ意識を落とした
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