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発覚。.5にしおりをはさみました!
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発覚。.5
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「まっ...待って...!蒼、ごめんっ....っ」
ゆっくりと距離を縮める蒼との間は
だいぶ狭まっていた
窓から差した陽でカッターナイフの刃が光る
口が....要らない....?
蒼の考えてる事が分からない
手にした凶器で何をするのか
分からない
分からないーー。
「功太は悪い子だよ。橘の為に使う口なんて裂いちゃっていいよね?そんな口要らない」
遂にベッドに辿り着き
片足を乗せ登ってきた
「別に....理樹の為なんかじゃ....っ、嫌だっ、蒼、蒼っ、やめて...頼むからっ、」
それで口を裂く気なんだと知り
功太は許しを請いながら哀願する
こいつなら本当にやり兼ねないーー。
やめて、と何度も口にし両手を前に突き出す
怖い。怖い。
「.....何で抵抗するの?早く。口、要らないから。使えなくしてあげる、早く」
「嫌だっ...ごめん、蒼。許して...っ、やめてくれよ....っ」
差し出せる訳がなかった
自分から傷付けて貰うなんて
どう考えてもおかしい
だが蒼だけは違った
中々いう事を聞かない功太への苛立ちが募る
功太の脚に蒼の脚が触れた
至近距離での凶器が
視界の中で揺れる
突き出した功太の手が蒼に触れたのを
きっかけに蒼が口を開く
「ねぇ、この手は何なの?まだ橘の事を庇うの?」
「....ぇ...?」
蒼の言う意味が理解できなかった
抵抗するのは自分の為だ。
痛いのは嫌だから、怖いから。
だが蒼の思考は歪んでいた
”橘の為に使う口を庇うのだから
抵抗だって橘の為だ”
というのが蒼の考えだった
困惑しきった顔で蒼を見つめる
そんなつもりじゃないのに
お互いの価値観の違いは
次の展開をも狂わせた
「だったら、この手も要らないね」
蒼は功太の右手首を掴みながら
意味深に言葉を吐く
次の瞬間、カッターナイフを握り締めた右手を
高く振り上げた
それは一瞬の事で抵抗する間もなかった
蒼は手に持った凶器を勢いよく振り下げた
突き刺さったそれは手首から肘にかけ
功太の右腕の皮膚を切り裂いた
血飛沫が飛び、腕から多量に血が流れ出す
「ゔぁ”あ”ぁっ....!」
与えられた激痛が腕から全身に広がり
叫びにも似た声をあげる
視界に映える赤い鮮血がより現実味を濃くさせた
痛い。痛い痛い痛い
怖い
功太はパニックになりながら蒼の手を払い
患部を抑える
本当に切られたーー。
抑える左手の指の間からは
止まる様子のない血がどんどん溢れ出る
恐怖と痛みで涙が零れる
「ぅあ”...ぁ....ごめ、なさっ....ごめん...な、さぃ....っ”..」
身体を震わせ痛みに喘ぐ
恐怖に支配された功太はただ
ごめんなさいと言い続けた
だが蒼は一切表情を変えずに
目の前で怯える存在に刃を突き出した
「功太が悪いんだよ。抵抗するから、嘘付くから。ほら、早く口出してよ」
ベッドに横たわり痛みに耐えしのぐ功太は
ボロボロと涙を溢れさせる目で
蒼を見つめる
「....ぃ、や....ごめんなさいっ...許し、て...くださっ...ごめんなさいっ...ごめんなさいっ....っ」
「謝って欲しい訳じゃないんだよね...僕は」
呟きながら怯え蹲る功太の腹に跨った
そしてカッターナイフの握り方を
柄を上に持ち、下に刃が来るように持ち替えた
「...ひっ...嫌、だっ...ごめんなさ、いっ...許して...許してくださ、い....っ、」
もう逃げる事も引き退ることもできなくなった
功太は必死になって哀願した
溢れ出る大量の血は
功太の袖だけじゃなく、ズボンやベッドのシーツまでを赤く染め上げた
蒼は切りつけた患部を労わる功太の左手に触れた
「何この手?功太が悪いんだよ?どうしてそんな要らない腕を庇うの?」
違うっ...
庇ってる訳じゃないんだっ...
痛いから、怖いから
理樹の為なんかじゃないのに...っ
...狂ってる........
頭の中では何でも言えるのに
言葉にするのは許されない
「....違うっ、ちが....ーーっ!!」
ゆるゆる首を振り否定する功太の左手を
乱暴に掴み引き寄せる
「何も違くない。この手も要らない」
冷淡に呟き、カッターナイフをまた高く上げる
嫌だ嫌だっ、と喚く功太に構わず
再度凶器を振り下ろした
「う”あ”あ”ぁぁ”っ!!」
切りつけた箇所から飛んだ血が
蒼の頬に撥ねた
だが血で染まったのは功太の右腕だった
左手を庇うために傷付いた右腕を出した為だ
蒼はその行動を取った功太に
目を見開き 驚愕した
「何でっ...」
「....ぅ、?ぅ....っ、痛いよっ....も....やめて、よっ...許し、てっ...」
一度裂いた傷に
十字に交差するように縦に入ったその傷を
左手で庇う事なく
功太は哀願し続けた
抵抗するのは余計痛い目にあうだけ
謝る事だけが、功太に選べる術だった
「....もう、嘘つかないからっ....蒼の....っ、為に、使うからっ...許して、くださっ、....ごめ、なさっ....」
生傷に交差した新しい傷。
痛みは勿論増し、右腕の感覚がおかしい
涙で視界も歪み、蒼がどんな顔をしてるか分からない
何も言わないで動かない蒼に
功太は言葉を並べる
「....蒼っ、....好き...だよ..っ」
この場を収める為
これ以上痛い思いをしない為
呟いた瞬間、蒼が腹の上で少し動いたのがわかった
「本当に....?」
蒼は動揺したのか、戸惑いながら聞き返した
「...ほん、と...だからっ、こんな酷、い事...しない、で...っ」
本心じゃない。
だからこそ、辛い。
「...うん。でも功太が悪いんだよ?ちゃんと反省したなら許してあげる。」
蒼は穏やかな声質で功太の涙を拭き取る
目が重くて開きづらい
蒼の顔がはっきり見えた
狂った様に人を切りつけたとは思えない程
優しく笑う蒼の笑顔に言葉を失った
っ...何でそんな顔になれるんだよ....
「僕の事、好き?」
それ程言われたのが嬉しいのか
蒼はその言葉を要求した
功太は虚ろな目のまま黙って頷くと
蒼は顎を掬った
「ちゃんと口で言って?」
怒ってはいない様だったが
頭が何だか回らない
「....好きだよ....」
口に出した言葉はその胸中を容赦なく抉る
僕も、と呟くと
蒼は功太の唇に自分の唇を重ねた
「....ん、っん....」
抵抗なんて出来ない
出来るわけがない
舌を挿れ、功太の上顎や歯列をなぞり
功太の舌に絡ませる
唇を離すと2人の唾液が糸を引いた
度重なる緊張感や多量の出血、
味わった事のない恐怖感、痛み、悲しみ
功太の頭は思考が働かなくなっていった
瞼が重い....
目の前の笑顔は俺が好きな笑顔じゃ、ない....
会いたい....
やっぱり会いたいよ.....
理樹....
「....やっと功太から聞けた。おやすみ、僕の功太」
功太は腕から大量の血を流し
ベットで横たわったまま意識を手放した
蒼の視界には血で染まった好きな人の姿が映る
大好きな怯えた顔も
痛みに喘ぐ声も泣き顔も見れた
それに
功太から好きだって言ってくれた
一生、離さない。
僕だけの功太
これからも大切に壊してあげるね
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白井を呼び出し、
シーツ類の片付けや衣服の洗濯を頼んだ
血で染まったそれらを見ても
白井は畏まりました、のみで何も言わない
「あ、救急箱ってどこだっけ??」
部屋を去ろうとする白井へ
蒼は功太を見ながら質問を投げた
「今、お持ちします。少々お待ちくださいませ」
白井はそう告げると部屋を出て行った
青冷めた功太の顔に見惚れたまま
蒼はうわ言の様に呟いていた
「....ふふっ、大好きだよ。僕の功太」
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