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手に入れたもの。にしおりをはさみました!
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手に入れたもの。
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「失礼します」
律儀にノックをして入室した白井は
蒼の元へ駆け足で歩み寄る
「....蒼様っ。何をなされているのですか!?」
白井の視界に映ったのは
まだ出血がおさまらない功太の腕を抱え
その顔や衣服を汚す蒼の姿だった
驚きのあまり薬箱を床に落とす
「お顔が汚れておりますよ」
ジャケットの内ポケットから
ハンカチを出そうとする白井へ
蒼は不思議そうに口を開いた
「...え?どうして汚れてるって言うの?功太の血は綺麗だよ。とっても」
言いながら功太の腕を抱え上げる
「ちょっとおさまってきたかな??」
蒼は切りつけた生傷に爪を立てなぞる
気を失った功太が小さく呻く
また血を吹き出す腕に頬ずりをした
「功太がね、やっと言ってくれたんだ。自分から好きだって。僕のものになったんだ。....やっと」
血で赤く染めながら作る笑顔に偽りがない事に
白井ですら狂気を感じた
そしてそこに入り込めないこともーー。
「しかし、それ以上の出血は命に危険でございます。早く手当を」
落としてしまった薬箱を拾い上げ
ベッド脇に座った
「それは大変だっ...功太が死んだら嫌だっ!」
蒼は薬箱を開けようと手を伸ばすが
白井はその手を優しく掴む
「とても綺麗なお姿ですが、このままでは私が蒼様のお顔を見ることができません。どうぞお風呂で洗い流してくださいませ。神崎功太の手当ては私が施行致します」
言葉巧みに蒼へ伝えると
蒼は血で染まる顔に
狂気は微塵もない柔らかな笑顔を浮かべた
「ありがとう。白井」
抱えた功太の腕から手を離し
ベッドから降りた蒼は
あ、と言いながら白井を振り返る
白井もそれに気付き蒼の方へ目を向けた
「いつもいつもありがとうね。僕、白井の事もとってもとっても大好きだよ?それだけは忘れないでね」
白井は少し驚いたような表情を見せた
(蒼様は本当に.....私の欲しいお言葉をくれる)
そして
ふっ、微笑んだ
「ありがとうございます。私もですよ。蒼様」
蒼は少し恥ずかし気にしながら
えへへ、と声を出すと部屋を出て行った
血で顔を汚したとしても
白井の中の蒼の笑顔は穢されていなかった
白井は気を失った功太を見下ろし
その青白い顔を見つめる
ーー彼の何に蒼様は惹かれるのだろうか。
こんなに抵抗されて
虚言を吐き、力づくで抑える愛の
どこに蒼様は魅力を感じているのだろうか。
そんな疑問に答えなど無く。
白井はまだ少し血が滲む傷をいたわりながら
手当を始めた
傷の深さは浅くはなかった
ぱっくりと割れた傷は十字状に交差し
そのエグさを物語る
治癒しても確実に残るだろう
消毒、薬、包帯でそこを手当てした白井は
功太の服に手をかけた
まだ衣服の交換は終わっていない
手際良く功太の服を脱がせる
下着姿で眠る功太の身体には
痣が酷く目立った
時間が経過し黄色く変色した痣から
まだ出来て間もない青紫色の痣まで
無数のそれが功太の白い肌を色付けていた
蒼が付けた跡
印
白井は持参してきた蒼の着替えを
功太に着用させた
抱え上げ正位置に寝かせる
枕を頭の下に敷き布団を掛けた
功太が小さく呻いた
「....り、き......」
白井は表情を変えず、功太を見下ろす
逃げる事もできない上
好きな人と引き裂かれているのに
なぜまだその心に想いを馳せているのだろうか
「諦めた方が楽ですよ.........私も。」
そう呟くと衣服とシーツ、薬箱を手に
部屋を跡にした
諦めた方が良いのは
蒼の異常な執着にも
功太の理樹への想いも
白井の蒼への想いも
全てに当てはまるものなのかもしれない
でも、それでも
諦められない恋が
歪んだ愛が
止まる事はないのだ
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浴室にはシャワーの浴びる音と
機嫌の良さそうな鼻歌が響いていた
排水口へと流れていく水は
赤く色を染める
「あーあ、ちょっと勿体無いねぇ....」
残念そうにも楽しそうに呟く蒼は
洗髪しながら鼻歌を続ける
ねぇ、功太
やっと言ってくれたね
やっと
君から、君の方から
”好きだ”って
これでもう
完全に僕のものになったね
ああ、嬉しいよ凄く
ずっとずっと僕が大切に壊してあげる
大好き
大好き
「大好きだよ...僕の、僕だけの功太....」
狂気に満ちた笑顔でそう呟くと
また鼻歌を浴室内に響かせるのだった
功太のその場しのぎの”好き”に
蒼は気づくことはない
いや、気付けるはずがない
功太の選択は
この先の歯車を狂わせていく
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