アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
カードキーにしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
カードキー
-
レトルト
目の前には、オートロック式の分厚い扉がある。
冷たい夜風が頬を掠めていく。
火照った体には心地よいかぜだ。
あの電話の後、駆け出したい気持ちを必死に抑えてここまで来たが、今になって不安になってきた。
どんな顔をして合えば良いのか
何を話したら良いのだろうか
そんな事を扉の前で考えて、いつまでたってもインターホンを押すことができない。
そわそわと動き回っているとガチャリという施錠の音と部屋の主が顔を出す。
アブ「…………まさかとは思ったけど、ずっと立ってたの?」
ぶんぶんと左右に首を振って答える
ああ、やばい緊張しすぎて声が出せない。
アブ「良いから入んなー?そんなところに立ってると俺が立たせてるみたいじゃん笑」
緊張を察したように茶化しながら、柔らかく話しかけられる。
レト「お、お邪魔しまーす。」
中には誰もいない事を知りつつも、挨拶をして入る、と
レト「…えっ…」
扉を背にしたアブさんに、抱きとめられた。
背後から抱きしめられて、身動きができない。
アブ「…レトやん、こんなに冷たくなって、可哀想に〜早くあったまんな〜?」
そう言いながらほっぺやら耳やら手やらをペトペトされる。
ーガチャン
施錠をしっかりしてから、部屋の奥へ奥へと追い込まれる。
びっくりした…
あまりの事に心臓が跳ね上がるぐらいに。
リビングソファに座ってようやく落ち着きを取り戻す。
さっきのは一体…
なんだったんだと視線を投げかけると、キッチンで何やら作っている。
レト「あ、あの、俺外で食べてきちゃって、その、」
アブ「あんまりお腹空いてないんでしょ〜?レトやん元々そんな食べないもんねー。」
そう言いながらトレイを片手に飲み物二本を器用に持ちながらキッチンから出てきた。
レト「…すごい。」
ローテーブルに置かれたトレイ上にはクラッカーにチーズやら何やらを色とりどりに盛り付けてある。それだけなのにこのオシャレさ。
感動して小学生並みな感想しか言えない俺をよそにプシュっと炭酸飲料が空く音がする。
アブ「はい、こっちレトやん」
手渡されて思わず受け取ってしまったが、これはシャンパンという奴では無いだろうか…。
どうしよう、今更お酒は呑めないとは言いづらく意を決して舐めてみる。
ペロッ
…甘い。とても甘くて美味しい
レト「ジュース…」
横目で見たアブさんの肩が小刻みに揺れて、ついに堪えきれなくなったのか爆笑された。
アブ「…レトやんかわいすぎるでしょーwwそれジンジャーエールだからねぇ笑」
レト「…ッ!まぁまぁまぁ、分かってたけどね!」
めちゃくちゃ恥ずかしいけど、お酒じゃなくてよかった。
つまみを食べつつ、ひたすら他愛の無い話をした。
あの時の実況はどうだったとか、コラボ企画をやるなら何が良いかとか、本当に他愛の無い話だった。
他の実況者と話す内容とさして変わらない。
どうしてそれで凹んでいるのか、自分にもわからない。
アブ「…ッ……、ら、……レトやん?聞いてる〜?」
やばい、聞いてなかった。
完全に思考を他の事に取られて左から右へと声が通り過ぎていた。
レト「…ぁ…の…」
嫌われただろうか。この至近距離に居るのに聞いてないとなったら、呆れられているに違いない。
しゅんとして見上げると困った様に笑われた。
アブ「…レトやん、もしかして酔ったの〜?笑まさかジュースで酔っ払うとかじゃないよね?勘弁してぇ〜笑」
言いながら伸びてきた手で頭をくしゃくしゃと撫でられる。
それだけで心が温かくなる。
くすぐったい気持ちから逃げる様に言葉を発する。
レト「…ぉ、れ飲み物のお代わり買ってきますね、アブさん何飲みます?」
アブ「んー、じゃぁ同じので笑 はいこれ〜」
ぽすっと手渡された財布とカードキー。
サラッと渡されたが、お財布だけ返してそそくさと外に出る。
ああいう大人になりたいと思いながら、撫でられた事に上機嫌で買い物を済ます。
帰り道で、カードキーをくるくると手のひらで回しながら考える。
こんな物を渡してくれるぐらいに、俺のこと信用してくれてる。
その事実だけで、何よりも満たされた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
12 / 13