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時ノ彼方【謙蔵】にしおりをはさみました!
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時ノ彼方【謙蔵】
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また彼が泣いている、君が泣く姿を見たくないのに
ケンヤにはある能力がある。時間を自由に旅できる能力だ。そのおかげで色々なことを思い出せたり見ることができたりとケンヤにとってはなかなか自由でいい能力だった。
けれど、ケンヤはその時間を旅できる能力でいつも見ているものがある。
白石蔵ノ介のことだ
彼はいつも泣いている
誰かを想って泣いているのだ。ケンヤはそんな白石をずっと見つめていた。
声が届かずにずっと真っ白な空間で一人泣き続ける白石をずっと見ていた。
『俺はここにいるよ―――…白石』
ケンヤの聞こえない声は当然白石には届かない
だけど謙也は白石には笑って欲しかった
実体のない自分だから何もできないのだ
姿も見えず
声も届かず
話すこともできない
そんな時間が何よりも辛く何よりも悲しかった
今すぐ君の元へ行きたいのに
君のせいでいつも同じ時間ばかりを旅しているんだ
巻き戻すことも早送りすることもできるのに
君のことが気になって君の時間ばかり……君の空間ばかりを辿るんだ
『泣かないで』
そうつぶやいてケンヤは白石の側に行った。
白石からケンヤの姿は見えない。ケンヤからは白石の姿が見える。
ケンヤはそのことを知っていた。だからこそこの空間のバリケードを破って白石の側にいるのだ。
ケンヤは白石の手にそっと触れた。ほんの少し白石の体がピクリと動く…感覚だけは伝わるようだ。
『君のことを愛してる。泣かないで笑っている君の顔を見せて―――。』
届かない声を残してケンヤは消えた。
白石は少しだけ涙が止まった。けれどまたすぐに泣く。
『神様、この声が届くのならお願いがあります……生まれ変わるときに実体のある人間にしてください。名前はケンヤ……名字は何でもいいです。いつでも彼の涙を拭いてあげられるように彼の側にいてあげられるように……彼に近い存在に生まれ変わらせてください』
ケンヤはそうつぶやいて消えた。その声を神は聞いていた。ケンヤには謙也という名を名字はオシタリと読み忍足という字を。そして彼が望んだ通り白石の側に居られるよう同じ中学生で同じ中学校の同じ部の人間として数百年後に生まれ変わることを約束した。
その代償として時を旅する能力を消されてしまったがケンヤにはもうそんな能力は必要なかった
『白石、今日も元気やな』
『謙也……ああ、もちろんやで! んー絶頂(エクスタシー)! 』
『うっさいわ! 』
謙也にケンヤとしての感覚も記憶もない。
しかし、遠く彼方の過去で願った『想い』には過去も現在も変わりがなかった。
『彼が二度と泣かないですむように―――…遠くから見てるよ謙也。白石を頼んだよ。』
ふと謙也にはそんな声が聞こえたような気がした。
空耳だろうと思い気には留めず謙也は今日も白石との平和な時間を過ごすのだった――――…。
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