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-※11- 鳳 清四郎 にしおりをはさみました!
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-※11- 鳳 清四郎
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※微グロ表現注意
最近、犬を飼い始めた。とても頭の悪い馬鹿犬で野放しにしていたら何をしでかすのか分かったもんじゃない。せめて不埒な行動を抑制出来れば良いだろうと考えていたが、どうやらこの馬鹿犬は此方の想像を絶する程、おつむが足りていなかった。
「言い残したいことは?」
「会長、今日も美人ですね!」
脊髄反射で犬の頬を引っ叩いた。拘束された状況でも減らず口が叩けるとは、よほど自分の立場を弁えていないらしい。もしくは、此方を舐め切っているか。後者だと、この馬鹿犬に嫌というほど分からせてあげねばならない。
大体この馬鹿犬が何をしでかしたというと、主の目を盗んで他の子犬と場所も弁えず盛っていたのだ。詳しく言うと、俺が居ないのを良いことに授業を抜け出し、姫路梓と保健室で不純な行為に耽っていた。もしかするとと思って親衛隊を遣わせていたが正解だった。現場を取り押さえ、生徒会室に連行したがこの馬鹿犬が激しく抵抗したせいで、悔しくも姫路梓は逃してしまった。まぁ、この際姫路梓はいい。この馬鹿犬にはそれなりの仕置きが必要だ。拘束した時に取り付けた首輪を思い切り引っ張る。
「お前がこれほど馬鹿だとはな。誠に遺憾なことだよ」
「ぐっ、…かい、ちょ……」
皮の首輪が上野の首を締め付ける。苦しそうな顔をする上野に少しだけ優越を感じた。手も足も拘束されて動けないにも関わらず、無駄にジタバタとする姿に愚かに思う。本当に首が絞まってしまう前に手を離してやった。解放され暫く噎せ込んでいたが、呼吸が整い余裕が出来たのか反抗的な目を此方に向ける。
「……会長、これ外して貰えませんかね? 俺、拘束プレイは趣味じゃないし、嫌な事思い出すんだけど」
「知ったことではないな」
犬の戯言を聞く謂れは俺にはない。手を上げて、後ろに控えていた黒服の男に例のものを持ってこさせる。
男は静かに木箱を掲げた。木箱の蓋を開け、中に入っていたものを取り出す。コレは下の緩い馬鹿犬にはピッタリの道具だ。警戒の色を示す上野に微笑んでやる。
「上野、歴史の勉強を始めよう。正解を答えられたら刑を軽くしてやっても構わない」
慈悲を見せるのも主人の役目であるからな。ただし、正解を答えられた場合であるが。
ずしりと重みのある鉄製の器具を手に持ち上野に見せ付ける。
「これは何だと思う?」
問い掛ける俺に上野は慎重に口を開く。
「………ペンチ、ですか?」
ペンチにしては大きめで、明らかに違っている点といえば口が鰐の形をしている。
「これは鰐口のペンチと言ってな、簡単に説明すると去勢用の専用のペンチだよ」
そう言えば、途端に上野の顔から血の気が無くなるのが目に見えて分かった。面白い具合の反応に自然と笑みが漏れる。
ペンチを鳴らしながら、上野に近づくと先ほどまでの威勢の良さはどこへやら怯えた様子で此方を見上げた。
「は、嘘でしょ……?」
ひくつく口角を無理に上げながら、俺を縋るように見る。俺は冗談を言わない主義だって前にも伝えたはずなんだがな。
「では、早速問題だ。男性器への拷問は捕虜にとって肉体的・精神的にも有効的な拷問だったと言える。しかし、中世でも男性器への拷問の実例は意外にも少なかったらしい。その理由は何故か、答えろ。」
心してな。と付け加える。どんどん上野の顔が青ざめていくのが面白い。最初から今のように静かにして手のかからない犬だったら、こんな手荒な真似をする必要なんてなかったのに。馬鹿な奴だ。
「ーーそろそろ時間だ。答えを聞かせてもらおうか。」
「………」
「沈黙は解答の放棄と取って、すぐさま刑を執行するぞ?」
「……中世に拷問する側が男の場合が多いと仮定すると、同じ男として男性器への拷問に躊躇したから……ですか?」
「……! 意外だな、正解だ。」
まさか完璧に答えられると思わなかったので拍子抜けだ。足りないおつむで一生懸命考えたらしい。そこは素直に褒め称えよう。
質問に正解し、ホッとしたのか上野は心を撫で下ろしている。そうか、正解したら刑を軽くするという約束だったな。
「じゃあ、正解した褒美に減刑をしてやる。睾丸二つ潰すところを一つにしよう。」
「……はああああ!?」
俺の慈悲がそんなに嬉しいのか上野は歓声の声を上げた。黒服の男に指示し、強心剤の注射器を持ってこさせる。強心剤を打てば睾丸を潰されたからと言って死ぬことはない。安心しろ、と声を掛ける俺に上野は物凄い勢いで暴れた。嬉しいからといってそんなに暴れたら、針が間違った場所に刺さるだろうと叱咤する。
「待っ、待って待ってーー、だっ…てめぇ!ふざけんなよこのサイコ野郎!!」
「は、」
上野が滅茶苦茶に叫んだかと思うと、なんと拘束具が外れた。鉄製の頑丈な拘束具だぞ、と驚くのも束の間、強烈な衝撃が左頰を襲った。身体が後ろに吹き飛ばされる。
上野に殴られた、そう気付くのは黒服の男達が暴れる上野を取り押さえようとして、回し蹴りを食らっているのが目に入ってからだ。
なんて奴だ。馬鹿犬と侮っていたが、とんだ珍獣じゃないか。
一通り暴れる上野を呆然と静観する。殴られた拍子に手放してしまったペンチと注射器を上野が見つけると悍ましいものを見るような目で一瞥してから、それらを窓の外に投げ捨てた。
校内のポイ捨ては重罪だぞ、上野。
「はぁー、はぁっ……俺、生きてる? 良かったぁ、まじで死ぬかと思った……」
「……睾丸を潰しても死なない」
「はぁ!? 普通に考えて同じ男なら痛み分かるだろ!?」
殴られた拍子にどうやら口内を切ったらしく、喋るとチリッとした痛みが走った。それよりも、俺の言葉に過剰に反抗する上野に理解出来ず首を傾げる。
「同じ男の話だろう。お前は犬だ。昨今の飼い主はどこでも盛らないように愛犬を去勢するのはマナーだろ? それに去勢した後のことが気になるなら心配ない。お前の今後の世話はもちろん面倒見るつもりだ。」
「それ本気で言ってんだったら、あんた、本物のサイコパスだよ。何、金持ちってそこまで思考がぶっ飛ぶもんなの? 怖すぎでしょ……」
「最初に言ったはずだ、奴隷になれと。奴隷なら身も心も主人に捧げるのは当然だ」
当たり前のことを俺は言ったはずだ。しかし、その瞬間上野は冷ややかな目を俺に向けた。はじめて向けられる冷た過ぎる視線に、思わず身動ぐ。なんだこの威圧は……本当にあの上野のもの何だろうか。
「俺さ、身も心もあんたに捧げるなんて言った? 会長の犬になってもいいよ、と言ったけど、この俺がどうして好きでもない相手に俺の身と心まで捧げなきゃなんないの?」
「……は?」
今、この男はなんて言ったのだろうか。理解が追いつかない。
しかし、上野は気にした風も無く、俺に少しずつ近付きながら話を続ける。
「勘違いしてるようだけど、会長の犬になる前から俺の身と心は、余すことなく愛しい恋人に全部捧げてるから。恋人でもないあんたに渡すもんなんて最初から一つもない」
きっぱりと言い切った上野は冷ややかな目のままだ。俺は心の内の動揺を悟られまいと気丈に上野を正面から睨みつけるが、脳に反して身体の震えは治らない。
スッと上野の手が伸び、俺の唇をなぞる。殴られて切れた部分を触れられ少し痛む。
「今回のこと、俺だったから一回殴っただけで許してあげるけど、もし俺の大事な恋人に手を出してみろよ。」
血を拭うようにして触れる指はこれほどないくらいに優しいのに、俺を見つめる目はどこまでも敵意で溢れている。
「ーー殺す」
そう言った上野は、俺に対して敬意だとか、従心さ、ーーそして愛情を、これっぽっちも持ち合わせていなかった。
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