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5月10日(日) 噛みつくにしおりをはさみました!
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5月10日(日) 噛みつく
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───桜の樹の下で見た雪町は。
人間味がなくって、ふと思った。
こいつ、吸血鬼なんじゃないかって。
「───ん…」
重い。
体が重い、何かにのしかかられているみたいだ。
寝返りを打とうにも、なんだか思うように動けなくて。
「うー」
唸っているうちに、首もとで"ぶちっ"と嫌な音がした。
「痛っ!!痛った!!」
首に何かが刺さったような痛みが走る。
「!?!?」
僕は一瞬で目覚めて飛び起きた。
「…雪町?」
膝の上に、私服姿の雪町がいる。
彼は口元についた赤い液体を舐めて、ごくりと飲み込んだ。
───こいつ。
僕は左手で首に手を当て、痛みを和らげるようにさする。
濡れた感触を感じて手を離すと、手のひらが指先まで真っ赤に染まっていた。
「………」
全身から血の気が引く。
───やっぱり吸血鬼か!!!!
ぼんやりと夢の中で考えていたことが現実となって現れたような気分だ。
「…っ」
雪町の右手が、血だらけの僕の左手を掴む。
「ちょ、おい…」
何をするのかと思ったら、彼は僕の手に舌を這わせた。
「!?」
味わうみたいに、丁寧に血液を舐めとっていく。
指の一本一本を、唾液で濡らしながら。
「っ…雪町……」
───エロすぎる。
朝っぱらからなんだこれは。
夢か?夢なのか?
目を潤ませながら僕の指を舐める雪町も、くすぐったい感触も。
「───っ、雪町!」
僕は雪町の頭を鷲掴みにして、無理やり顔を上げさせる。
「はぁっ……ぅわ!」
息を整える間もなく、再び首に噛みつかれ、押し倒された。
「ゆ、き…町っ」
痛いし。
なんか吸われてるし。
首に息かかってるし。
耳に髪の毛当たって痒いし。
…わけわかんねー。
寝起きで抵抗する力もなく、頭も回らず。
されるがままに、天井を見上げた。
波のように、断続する痛み。
それに慣れてきたとき、雪町の唇がゆっくり離された。
「…はぁっ」
「っ…」
唇を舐める雪町の瞳は、琥珀色をしている。
…あーもーこれ、絶対こいつ人間じゃない。
そういえば、寮に入った次の日も血を吸われかけたっけ。
あの時は、寸前で雪町が正気に戻って…。
───ん?今は正気じゃないのか?
「なぁ、雪町───」
「───足りない」
僕が声をかけようとすると、雪町は僕の手をぐいっと引っ張った。
さっき散々舐められた方の手だ。
「え、おいっ」
なんの躊躇もなく、雪町は僕の手首に噛み付く。
「痛った!!痛い、雪町痛い!!」
うなじで味わったものとはまた違う痛みが手首から全身を震わせた。
「っ…雪町…ぃ、痛い…っ」
僕の呻き声なんかガン無視で、雪町は何度も喉を鳴らす。
「はっ…はぁっ」
だんだん息がしづらくなってきた。
気が遠くなりそうで、視界が揺れる。
「っ…う……」
普段は無口で、全然口を開けない雪町の八重歯が見えた。
明らかにヴァンパイアのそれだ。
───痛すぎ、そこ、あれ、静脈だか動脈だか。なんか重要な血管あるとこだろ。
そこはやばいって、死ぬ。
もう、死ぬ───。
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