アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
5月10日(日) 傷痕にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
5月10日(日) 傷痕
-
深く眠っていた僕は、鼻につくいい匂いで目を覚ます。
「………」
美味しそうな匂いだ、腹が減って仕方ない。
「───…原、高原」
「んぁ…」
誰かに起こされて、僕はゆっくり目を開けた。
「夕飯を持ってきた」
「……」
雪町が僕の机から椅子を引きずってきて腰掛ける。
彼の膝の上には、食堂で見る黄色いトレー。
白米と味噌汁、煮魚、漬物。
「…めっちゃ和食」
寝起きの僕が思わず呟くと、雪町は箸を器用に使って煮魚を切り分ける。
「起きろ、口を開けろ」
「…え!?おまえが食べさせてくれんのか!?」
僕はがばっと起き上がった。
「貧血でまともに動けないだろ」
「僕のために、わざわざ食堂から…」
感動のあまり泣けてきそうになる。
「…早く口を開けろ」
照れているのだろうか、雪町はイライラした様子で僕の口元に箸を持ってくる。
「んぁ」
僕が口を開けると、雪町は丁寧に煮魚を舌の上に置いて箸を離した。
「……」
僕がそれを飲み込んだのを見計らって、彼は同じ動作を繰り返す。
白米と漬物もいい感じに挟んでくれた。
「……」
これは、雪町なりの罪滅ぼしなんだろう。
「ありがとう、雪町」
「………」
目を合わせると、彼はばつが悪そうに逸らした。
「ごめん」
箸を置いて、雪町が俯く。
「ごめん…」
「……」
顔を上げようとしない雪町に、僕はどんな風に声をかければいいのか分からなかった。
「怒ってないよ、雪町」
戸惑いながら、雪町の髪に手を伸ばす。
軽くなでると、雪町は顔を上げた。
「……」
細い眉が不安げに下がって、目が潤む。
───触れてるのに、まだ遠い。
もっと、もっと近づきたい。
泣き出しそうな雪町の顔を、いつまでも見つめていたい。
綺麗だ。
雪町の悲しむ顔は、誰よりも。
「……っ」
だから誰にも、見せたくない。
「───!?」
気付いた時には、もう遅かった。
髪を撫でていた手で雪町の頭を引き寄せ、顔を寄せる。
目を閉じて、そっと口付けた。
「んっ…!!?」
温かくて、柔らかい感触が重なり合う。
「……」
僕、何してるんだろう。
───絡まった思考が、雪町とのキスで解けていく。
唇を離すと、目を見開いた雪町の頬が赤く染まり出した。
「なっ、なに…」
瞬きもせずに固まっている。
「あ、えっと…つい」
「つい!?」
「雪町が…っ」
…あんな顔、僕に見せるから。
「俺がなに」
雪町がぎろりと僕を睨んだ。
「…なんでもない」
言えばきっと、いや必ず怒るだろう。
無意識に、あんな顔を見せる雪町は。
…他の奴の前でもあんな顔、すんのかな。
嫌だな、なんで、嫌なんだろう。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
20 / 91