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5月18日(月) 絶対ににしおりをはさみました!
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5月18日(月) 絶対に
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───僕の、好きな人。
「紫鶴、紫鶴ー」
カーテンを全開にした眩しい部屋の中。
「起きてってば…」
いつもならとっくに起きているはずの紫鶴の肩を揺する。
「しーづーるー!」
土日明けの月曜日。
昨日は剣道部の試合で、紫鶴の帰りがすごく遅かった。
そんな日の翌朝は、決まってこうなる。
「……」
もう放ったらかして行こうかな、と僕が思った時。
「…ミケ」
紫鶴の目が薄っすらと開いた。
「紫鶴!」
───起きた!!
「遅刻するよ!早く支度して!」
「朝飯は…」
「そんな時間ないから!!」
のろのろと支度を始める紫鶴を、僕は足踏みしながら急かす。
「早く!」
「……」
着替えた紫鶴の背中を押して、部屋を出た。
もうほとんどの生徒が出払った寮はとても静かだ。
「行こう!」
鍵を閉めて、紫鶴に手を差し伸べる。
「……」
紫鶴は少し驚いた様子で、その手を見つめた。
「!」
…手を繋ぐのは、おかしかったかな。
「あ、ご、ごめん」
恥ずかしくなって手を引っ込めようとすると、直前で紫鶴につかまれる。
「えっ」
「今ので目が覚めた」
彼は僕の手を引いて駆け出す。
「わっ…」
紫鶴に引きずられるように、僕たちは寮を飛び出した。
「……」
ふと、目の前を走る背の高い紫鶴を見つめてみる。
まっすぐな黒髪が、風に揺れる。
紫鶴の動きに合わせて、波打つように。
…触れたいな。
今まで何度、そう思っただろう。
入学して、同室になって、今日まで過ごしてきて。
気付いたら、好きになっていた。
決して言えない、悟られてはいけない。
…男同士、なんて。
紫鶴が知ったらどう思うだろう…。
絶対に、迷惑をかけてはいけない。
だけど、今だけ。
振り向かないと分かっているから、見つめられる。
見つめるだけなら、誰も咎めたりしないから。
その度に、普通じゃない自分を自覚するけれど。
───絶対に。
これ以上は望んだりしないから、どうか。
別々の道を歩き出すその日までは、一番近くで。
この、生暖かくて心地よい息苦しさを。
君に気づかれないまま、傍にいさせて。
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