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6月26日(金) 棒倒しにしおりをはさみました!
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6月26日(金) 棒倒し
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棒倒しは、まず各学年の東軍、西軍が戦い、勝った3チームが総当たりをする。
その中で順位ごとに点数が入る。
点数配分の高い競技のため、応援にも気合が入っている。
───あの棒を倒して、上に刺さってる旗をとる。
つまり、旗を取れば勝ち。
3メートルの棒の上に揺れる白い旗。
僕がいる東軍の方には、赤い旗。
整列して、僕は相手軍の旗を見据えた。
『それでは!棒倒しを始めます!!』
放送部の合図で、審判がピストルを高く掲げる。
「用意───」
パァン!とピストルが鳴り響いた。
「っ!」
僕は全速力で駆け出す。
相手の棒の周りには、西軍の生徒たちが待ち構えていた。
「やばい、高原が来た…」
ところどころに、怯えた表情が見える。
先輩との暴力騒ぎのおかげだ。
僕は生徒たちの隙間に滑り込み、棒を握った。
「うぉらっ!!!」
力いっぱい棒を引っ張り、そのままぶっ倒す。
遠心力で飛び出した旗が、地面に落ちた。
『おぉぉーっとぉおお!西軍の棒が倒れましたぁぁぁーっ!!』
ピストルが2発鳴って、試合が終了する。
「ナイス高原ぁーっ」
応援席から仙座の声がして、振り向いた先には。
「っ!?ゆ、ゆゆ雪町!!」
仙座と雛貴と、雪町がいた。
3人並んで応援席に座っている。
───ゆ、雪町が見てた!!!
僕、ちゃんと活躍してたかな。
「…次はばっちり活躍しよう」
勝ったから、試合はまだある。
「次だ、次…」
そう思いながら臨んだリーグ戦。
2年生との試合は、特になんの活躍もせず勝った。
…やばい、今の試合、僕空気だった。
意気込みすぎただろうか。
…雪町に、いいとこ見せたいのに。
空回る気持ちを抑えて、僕は試合の開始位置に整列した。
次の試合は、1年と3年の東軍同士の戦い。
どちらが勝っても、東軍に入る点数に変わりはない。
が、両チーム共に勝つ気満々だ。
僕は相手チームの赤い旗を見上げる。
「…!」
その時、相手軍からひとり、列を抜けて一歩前へ踏み出した。
「…怜?」
僕と同じ、目立つ金髪がワックスで固めてある。
静かに前へ出た怜は、僕の方を向いてにやりと笑った。
「……」
僕は深呼吸をして、怜の挑発に乗る。
僕が足を踏み出すと、怜はさらに前へと歩き出した。
僕も同じように、トラックの中心へと足を進める。
全校生徒が、息を飲んで僕たちを見ていた。
「よー、柊。ずいぶん気合入った髪型だな」
「怜だって、人のこと言えないだろ」
整った顔立ちと、僕より少し高い身長。
よく似てる、なんて言われるけど僕はそう思わない。
…怜のほうが、僕より絶対かっこいい。
強くて、届かなくて、憧れてやまない実の兄。
ずっと追いかけてきた。
離れて、再開しても、また同じことを思うんだな。
超えたい。
───超えられない。
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