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さながら乙女ゲーの主人公の如くにしおりをはさみました!
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さながら乙女ゲーの主人公の如く
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付き合っていた彼女が置いていった乙女ゲーを彼女にフラれた辛さを吹っ切る為にやってみた。それはもう砂糖よりも甘い練乳をはきそうになる、それを有名な絵師が飛びっ切りイケメンのキャラに言わしているのだ。何でかやってるこっちが恥ずかしくなって、最後には主人公を攻略したくなってくるのだ。こんなもんを俺の元カノはやっていたのか、本気で砂糖はきそう。
そんなふうに俺が乙女ゲー攻略にせいを出していたら隣に誰かが引っ越してきた。少ししか見ていないが、乙女ゲーのキャラに例えるとミステリアスで儚い系だ。もうそういうキャラに例えてしまうとなかなか俺は終わった人間だと思う。そして、男に恋するのも終わっている。あれだ、彼女と別れて血迷ったという事にしておこうと思う。
「初めまして、此処に引っ越してきた者ですが。」
「あ、はい!」
目の前の男はちょっとびっくりしたように俺を見た。俺はまだどきどきしていた。
「えっと、名前、教えてくれますか?俺は星村って言います、よろしく。」
「お、俺は、上月です!こちらこそよろしくお願いします!」
それじゃ、と男は隣の部屋に入っていってしまった。
星村と聞いてはっとした、俺がずっと新刊が出ると欠かさず買っている作家の名前に似ていた。慌てて本棚の本を全部ひっくり返して探した。あの男は星村と名乗った、おんなじ名字の作家の小説を見つけた。でも、名前が一緒でも違うという事もある、落ち着け俺、隣の星村さんは好きな作家じゃなくって違う職業なんだからさ、作家なんかじゃないさ。気になれば気になるほど確かめたくなるのが人間なんだと思う。もし星村さんが俺の憧れの作家でおんなじマンションのお隣さんっていうシチュエーションはアリなのか。なんのイベントだ。
それから俺のもやもやも晴れず一週間が過ぎた。大学の講義も真面目に受けてない、やっちゃいけないことなのだが。星村さんとはたまにゴミステーションで一緒になったり、ばったり階段で会ったり、煙草を吹かしている時に会ったり、結構会っている。お隣さんだから仕方ないのだけど!
星村さんは結構だらしなくって不摂生してますって感じだった。透明なゴミ袋を見ればわかる、あの人カップ麺しか食べてない。じゃあお前は?って聞かれれば俺は一応自炊している、この前は肉じゃが擬きを作った。母さんがいたら全力で自慢したい。とか考えていたら、見たことのある背中と教授、俺は柱に隠れて少し聞き耳をたてた。途中でおんなじ学科のやつに見つかって凄い変なやつを見るような目をされた。会話の内容は、まあよくある久しぶりとか元気にやってるかとかそういう会話だった。
「先生、今さっきの人、誰ですか?」
「ああ、あいつはね、最近作家になって、ここらへんに引っ越してきたって言ってたよ。」
教授はにこやかに俺に話してくれた。名前はやっぱり星村と言うのだそうだ。
それを聞いて俺は星村さんを追いかけてタックルしていた。星村さんはちょっとよろけて俺を受け止めてくれた。
「あの!俺、星村さんの作品が大好きで、」
「え、うん、へ?」
「だから、サインと、じゃなくって!」
俺は星村さんの手をがっちり掴んで言った。
「俺んちに、飯、食いに来ませんか!」
言って後悔した。何で飯なんだよ、俺!
「あのっ、あれ、星村さん不摂生してるっぽいから!だから、」
「…ぷっ。」
星村さんはいきなり吹き出して俺の肩をバシバシ叩いて腹を抱えて笑っていた。
「あー、面白いなー、上月くん、いきなり食事のお誘いかー、今の大学生は侮れないなー。」
星村さんは目にためた涙を拭いて、まだ肩を揺らして笑っていた。そろそろ俺は恥ずかしくなっている。
「じゃあ、お言葉に甘えてお食事に誘われようかな。」
「ほんとですか!」
「うん、美味しいの作ってね、上月くん。」
「もちろん!」
これから俺はさながら乙女ゲーの主人公の如く、ミステリアスで儚い系の作家をおとす作業に出ようと思う。
これからの俺の頑張りに期待だ。
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