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姉ちゃんとこたつにしおりをはさみました!
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姉ちゃんとこたつ
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「たっだいま〜〜。」
「おっ、お帰り。雄大。」
姉の詩央里がこたつから顔だけ出して、迎えてくれた。
「ただいま。」
雄大ははぁっ〜〜といいながら、外套を着たままこたつに入った。
「何?溜息?一丁前に?」
「何だよ。悪いかよ。母ちゃんは?」
雄大は手元にテレビのリモコンを引き寄せた。
「ミニバレー。元気いいよね。」
「父ちゃんはまだか…。」
「年末だからね〜〜。あっ、舜様出てる。そこ、チャンネル変えないで。」
「シュウ様?」
「舜!糸井 舜って今年ブレークした俳優さんよ。正統派イケメンよね。」
テレビにはやたらと整った笑顔を振りまく、男性が大きく映し出されていた。
「…今日来たお客さんのほうが、正統派っぽい。」
「ん?」
詩央里が振り向いたので、雄大は首を振って「何でもない」といった。
「ねぇ、姉ちゃん。男性がさ、雑貨屋でムズカ〜〜シイ顔してる時ってどんな時だと思う。」
詩央里はむくりと起き上がった。
「はっ?」
「いや!なんか難しい顔して、色んな商品を見て、どーしようかな〜〜って悩んでる時って、話しかけたほうがいいのかな?」
詩央里は変な顔して再びこたつに潜った。
「えっ?何その反応?」
「時期が時期だけに彼女へのプレゼントを考えてんでしょう?どれがいいかわからないけと、自分で選んであげたい。店員に話しかけるタイミングがわからない。だから難しい〜〜顔して色んなお店をぐるぐるしてんのよ。」
「そっか。」
雄大は温まってきたのでようやく外套を脱いだ。
「はんっ!女なんてネックレスとかバッグとか高級品あげとけば間違いないのよ!女ってのはそういうのが欲しいの!」
(あっ…俺の女性への固定概念って、姉ちゃんの影響か…)
ふとあの真剣な横顔が頭をよぎる。
「でも真剣に悩んでくれたら嬉しくない?」
詩央里はバッと起き上がって、不機嫌な目で雄大を睨んだ。
「…嬉しくない?」
「嬉しくない。別れたらタダのガラクタだもん。バッグとかなら売れるから、貰ってもゴミにならないもん。」
「あっ…」
ふと母の言葉がよぎる。
”詩央里ちゃん、また別れたんだって。毎年、クリスマス前に別れちゃうわね〜〜。だから雄大もクリスマスはお家にいてね。”
雄大は目を泳がせ、蜜柑の入った籠を引き寄せようとした。
「大体!」
雄大が引き寄せようとした籠から詩央里がガッと蜜柑を掴んだ。
「あんた、プレゼントなんてあげたことないでしょう!?」
「…はい。」
雄大は小さくなって蜜柑を掴んだ。
詩央里は「ふんっ!」といいながら、蜜柑の皮を剥き始めた。
「今度見かけから、話しかけてみなさいよ!絶対、彼女へのプレゼントだから!」
「う、うん。。」
詩央里は大きな口を開け、蜜柑を放り込んだ。
そんな姉の姿に雄大は口をすぼめた。
(女の子も真剣に選んでる姿、見せてあげれたらいいのに…)
コロコロと転がる蜜柑を見ながら、テレビから聞こえるクリスマスソングが少し心地よく感じた。
「ゆーたん、これ並べといて。」
ドすんとダンボールを渡され、雄大はブスッとした。
「僕、西川ちゃんより年上だよ。」
西川ちゃんは雄大より3つ年下の19歳だ。女子大生。
「だってゆーたん、年下みたいだもん〜〜可愛いー。」
西川は雄大の頭をくしゃくしゃと撫でた。
「やめろよ。ほら、手伝って!」
雄大はダンボールを床に置き、蓋を開いた。
「へぇ〜い。あっ!」
雄大がダンボールに手を突っ込んだ時、西川が声をあげた。
「なんだよ。」雄大は不機嫌そうに西川が見つめる方に目をやった。
(あっ…)
黒いコートに黒い髪、スラリと伸びた足元も黒だった。
「あの人、最近よく…ゆーたん?」
雄大は引き寄せられるように男性に近づいた。
(今度こそ!)
「何かお探しでしょうか?」
「あっ…。」
雄大は覗き込むようにして、笑顔を作った。
男は驚いたように持っていたマグカップを棚に置いた。
「それ、結構人気なんですよ。取っ手の部分がこう…動物の耳になっていて、マグカップの絵と完成するんです。」
「へぇ〜〜〜。」
男性が関心する姿を見て、雄大は(今気づいたんかい!?)と突っ込みたくなった。
「これは女性に人気なんですか?」
(来たっ!!)
やはり姉の言うことは正しい!というのが証明された一言だった。
雄大はニヤニヤっとしながら、
「えぇ。お友達に贈るって方も多いですよ。」
ここでジャブ。
”友達”と”恋人”ではプレゼントに雲泥の差があるはずだ。
「”友達”か〜〜。」
男性はしばらく考え込むように顎に手を当てた。
(きっちりと整った顔の人だな。鼻筋も通っていて、目は切れ長で、口元も上品な感じ。なんていったらいいか…全体のバランスがいいんだろうな〜。)
背が低めの雄大にはスラリと伸びた足も羨ましかった。
(僕は黒似合わないし…)
今日着ているグリーンのセーターを見ながら、肩を落とした。
「あの…」
「あっ、はい!」
雄大はセーターを引っ張りながら、顔を上げた。
男性ははにかむような顔をして、雄大に顔を傾けた。
「一緒に選んでくれませんか?」
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