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プレゼント選びは困難を極める
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「椿くん!」
「か、加藤さん。」
いつもの黒いコートで、仕事帰りのはずなのにルンルンした笑顔を浮かべた加藤がまっすぐにレジにいた雄大の元へやってきた。
「来てくれたんですね!」
雄大もつい笑ってしまった。
「勿論だよ!」
その加藤の笑顔に何故か胸が詰まった。
(彼女からいいこと聞けたのかな?)
「で…あの…あっ。」
雄大がレジから身を乗り出そうとした時、他のお客さんがドスンとレジに商品を置いた。
「俺、店内見てるから。」
(あぁ…)
「プレゼント包装ね。」
「…はい。」
「あれ、ゆーたんのお客様来てるよ。」
必死でプレゼント包装する雄大の横に西川が、嬉々としてやってきた。
「知ってる。」
「何か探してるんでしょう?あの人。」
「うん。彼女へのプレゼント。」
「えっ〜〜残念。彼女いるの〜〜がっかり〜〜。」
「西川ちゃん、彼氏いるじゃん。」
「あぁいう大人な男性ならすぐ乗り換えれるわ!ゆーたん、忙しかったら私、行ってこようか?」
雄大は猛スピードでリボンを巻いた。
「大丈夫だよ。レジ、お願い!」
「ちょっ…」
店内を見回していると歩くたびにお客の問い合わせに捕まってしまい、気がつけば30分以上経っていた。
「すみません。お待たせして!」
グラスを見ていた加藤は、優しく笑いかけた。
「忙しいのにゴメンね。」
「いえ!彼女、グラスが趣味だったんですか?」
「いや、これは俺の趣味…てまではいかないんだけど、ワイン飲むんだ。」
(わっ〜)
加藤の事がひとつ分かり、雄大は得した気分になった。
「今、色んな種類のグラスがあるんだね。椿くんはワイン飲む?あっ、未成年か?」
「いえ、もう22です!」
「えっ!意外!もっと若いかと…とはいっても俺より6つも下なんだから、若いよね。」
(28か〜)
「ん?」
感激する雄大の顔を加藤は覗き込んだ。
「いや!何でもないです!ワイン、あんま飲んだ事ないんで、今度、ちゃんと飲んでみます!彼女もワイン好きなんですか?」
「ん〜〜彼女もあんまり飲んだ事ないって言ってた。」
「じゃあ、加藤さんが選んだワインとグラスがプレゼントしたらいいかもしれませんね!ワインなら加藤さん、得意分野なんでしょう?」
「得意ってほどじゃないよ。知ってる程度さ。…それにアルコール弱いって言ってたしな〜〜。」
プレゼントを選ぶのに疲れたのか、加藤はため息をついた。
「あっ、写メは!?」
雄大は話をそらそうと手をパチンと鳴らした。
「貰ったけど…。よく分かんなかった。普通の格好してたし。」
(ずいぶんやる気ないな…来た時、楽しそうだったのに…)
待たせたのが悪かったのかも…と思いながら、雄大は最大限に頭をフル回転させた。
「そうだ!!」
雄大は加藤の手を取った。
「こっち来てください!」
「花瓶…?」
数は多くないが、台に並べられた花瓶はキラキラとしていた。
しかし、雄大の目当ての花瓶がなかった。
「あれ?売れた…?」
「…?」
雄大は(在庫があったはず!)と思いながら、台の下の幕をめくって、中へと入った。
そこは在庫置き場になっていて、この時期は在庫が多くて、中はひっちゃかめっちゃかになっていた。
(これ…だ!)
目当ての物は1番奥にあった。
「椿くん…?」
「ありました!!!」
雄大は手にした花瓶を高々と掲げた。
びっくりした顔の加藤に雄大は、「えっと…」と口ごもった。
「綺麗な花瓶だね。」
加藤はそっと手を伸ばし、雄大の花瓶を持った手を触れた。
「あっ、はい。」
雄大はパッと加藤にその花瓶を渡した。
クリスタルの花瓶は、天使の彫りものが施された、華奢なデザインの花瓶で、入荷した時から雄大のお気に入りだった。
「彼女さん、家庭的な方だって言っていたんで、お家の飾り物とかいいかなって思って。これは上品なデザインだし、サイズも大きくないんで、邪魔にはならないかと。これに花を添えて持って行ったら、いいと思います。ほら!彼女さんの家に行けるかも!」
「家に….」
加藤は困ったように笑った。
(なんでそんな事いったんだぁ〜〜僕は〜〜!)
冗談のつもりで言ったのに、自分の首を絞めるような気分だった。
「いや…あの…その…もっと…彼女さんのこと知りたいでしょう?」
雄大はドギマギとして、頭をかいた。
(!?)
ふわりと長い指が雄大の頬に触れた。
「何かついてるよ。」
加藤はにっこり笑って、雄大の頬を親指で擦った。
「あっ…そんないいですよ!」
雄大が身を引こうとするとぎゅっと顎を掴まれた。
「だめ。もう少しだから。…ほら、取れた。」
心臓がバクバクした。顔が赤くなってないか心配だった。
「す、す、すみません。。」
雄大は目を合わせれず、俯いた。
「いや、俺の為にありがとう。君のおかげでいい物が選べたよ。」
「いえ…そんな…」
「本当にありがとう。」
その”ありがとう”は”さようなら”にしか聞こえず、雄大の胸にポツンと何かが落ちた。
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