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信頼にしおりをはさみました!
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信頼
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今日は昼休みに篠宮が全て仕事を終わらせたために、放課後は仕事はなかった。
だから、オレ、一ノ瀬ルイは風紀室で、風紀委員長の睦月と、仕事放棄中の役員をどうするかの話と、クリスマスパーティーの話をしていた。
「クリスマスパーティーなぁ。
毎年やってるが、今年は特に問題が多いから、成功するか……」
「だが、楽しみにしてる奴が居る以上、やって損はないだろう」
確かにな、と呟いた睦月の隣で楽しそうに微笑む、副委員長の如月が視界に入った。
「随分楽しそうだな、如月」
「はい、クリスマスってこれといった思い出はないんですが、今年は翔と一緒だと思うと嬉しくて」
「港醍!」
……………………惚気か。
つか、オレの前でイチャイチャするな。
「クリスマスパーティー決行だ。
港醍のためにっ」
「救えねぇな」
「港醍が居れば十分だ」
…………オレにもそんな奴が欲しいな……
なんて、夢のまた夢か。
目の前のピンクのオーラに呆れてると、風紀室の電話がなった。
睦月が恨めしそうに如月から離れ、電話をとる。
「もしもし?
篠宮か。 なんだ。
…………制裁?
場所は?
…………わかった」
睦月は電話を置くと、風紀室に居る委員に向き直った。
「制裁だ。
場所は美術フロア、東階段から奥に行った空き教室らしい。
準備ができ次第行くぞ」
「篠宮が居るのか?」
「あぁ、篠宮本人が目撃したらしい」
「オレも行く。
いや、先に行ってる」
「は? あ、おいっ」
自分でも何故かわからないが、篠宮が関係しているとどうしても気になってしまう。
アイツの本心を知りたいという、ただの好奇心か、それとも…………アイツに期待してるんだろうか…………
睦月が言っていた場所に近づくと、出来るだけ気配を消して探す。
ふいに扉がない教室を見つけた。
明らかに怪しい。
中の様子を伺うと、やはり篠宮が居た。
中に入ろうとしてふと留まった。
篠宮……怒ってる……のか?
耳をすますと声が聞こえてきた。
「これだけ言ってもわかんねぇのか。
いつまでも藻掻くな。
見苦しいんだよ」
普段の篠宮からは想像もつかないほど、冷たい声色だった。
それに、いつもみたいなおちゃらけた口調じゃない。
「この子がどれだけ怖かったかわかってんのか?
なぁ?
なんで泣いてんだよ?
自分勝手に泣いてんじゃねぇぞ!」
怒鳴り声が響いた。
あの篠宮が、人のために怒ってるのか?
篠宮の様子を食い入るように見つめていると、後ろから声をかけられた。
「睦月か…………」
「何してんだよ、こんなとこで。
邪魔だ。
ん? 扉どこ行った?」
睦月は周りを見回しながら中に入っていった。
オレもその後に続く。
中に入ると、篠宮はもういつも通りだった。
それから現状を確認して、篠宮にも事情を聞くらしい。
だから、少し待ってもらい、篠宮と二人で話す時間をもらった。
オレ達は、少し離れた空き教室に入り、そこら辺にあった椅子に腰掛けた。
篠宮は立ったままだ。
聞きたいことはいろいろあるが、とりあえず、単刀直入に聞こうか。
「お前、普段キャラ作ってんのか?」
少しの沈黙の後、篠宮が小さく呟いた。
「………………え?」
オレは二度も言う気はない。
篠宮は少し考えるようにして、首を傾げた。
「キャラって、なに?
こういう喋り方のこと?
って、もしかして僕がキレてた時居たの?」
「聞いていた」
「なるほどねー。
別に作ってる訳じゃないよ。
ただ、怒ると歯止めがきかなくて、口が悪くなっちゃうだけだから」
「…………」
「あ、疑ってる?
それを言うなら兄さんの方がキャラ作ってるじゃんw
ホストなんて見た目だけで、中身ヘタレなんだからwww」
「話をそらすな」
睨むと、篠宮は笑みをおさめた。
「バレたかぁ」
「オレに言いたくないことがあるのか?」
「それはお互い様でしょ」
「…………そうだな。
だけどこっちは学園を背負ってる。
お前の考えがハッキリしないことには、お前を疑わざるを得ない」
「じゃあ、本音を言ったら信じてくれんの?
何を言えば信頼してくれる?」
信頼?
そんなもの不要だ。
必要なのは真実かどうかだ。
「会長って、悲しいね」
ふいに呟かれた言葉の意味を図りかねて、顔をあげる。
すると、思いの外無表情の篠宮と目が合った。
「どういう意味だ」
「寂しい人だねってことだよ。
人を疑ってばっかで、信頼なんて要らないって思ってるんでしょ?」
「お前なんかにはわからねぇだろ」
「わかるよ」
「ふざけんな」
「大真面目だよ。
ねぇ、じゃあさ、僕の昔話しようか」
昔話?
「今の僕ができるまで、会長に教えてあげる。
そしたら、信頼してくれる?」
「どうだかな」
「じゃあ、いいや」
「…………」
わからない。
コイツが危険なのか、それすらわからない。
「お前は何がしたい」
オレの言葉に、篠宮はニッコリと微笑んだ。
「したいっていうか、してほしい」
「何をだ」
権力でも狙ってるんだと思った。
そうじゃなきゃ、親衛隊の奴らが望むようなことだろうか、と。
後者は思っただけで本気じゃなかったが。
だが、篠宮が言った言葉は、想像もしない……いや、出来るわけない。
オレには理解もできない。
微笑んだまま、カタチのいい唇が動いた。
「信頼」
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